東京, 6月25日, /AJMEDIA/
官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)が半導体素材大手のJSRの買収を検討していることが24日、分かった。買収額は1兆円規模となる見通し。政府は経済安全保障に不可欠な半導体のサプライチェーン(供給網)構築を急いでおり、日本が強みを持つ半導体の素材分野でも競争力のさらなる強化を目指す。
東証プライム市場上場のJSRは半導体の回路形成で使用するフォトレジスト(感光材)と呼ばれる素材で世界トップクラスのシェアを持つ。JICは海外を含めた競争当局の審査を経た上で、早ければ年内にもJSRへのTOB(株式公開買い付け)を実施。買収が順調に進めば同社は上場廃止となる。
JSRは合成ゴムの国産化を目指し、1957年に国策会社「日本合成ゴム」として設立された。69年に完全民営化した後、半導体素材やディスプレー材料など電子材料分野や医療分野に事業領域を拡大してきた。一方、祖業である合成ゴム事業は2022年にENEOSホールディングス傘下のENEOSに売却した。JICはJSRを非上場化することで、半導体素材事業への集中投資や事業再編を加速させる。
経済産業省は30年に国内の半導体関連企業の合計売上高を20年の3倍となる15兆円超に引き上げる目標を掲げている。これまで計2兆円の予算を確保し、半導体受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県内での新工場建設や、ラピダス(東京)による次世代半導体の国産化などを支援している。
JSRは24日、JICによる買収の報道について「本件を検討していることは事実だが、本日現在決定している事実はない」とのコメントを発表。「26日開催の取締役会に付議する予定」とした。