東京, 10月23日, /AJMEDIA/
Adobeは、10月18日(現地時間、日本時間10月19日)からサブスクリプション型クリエイターツール「Creative Cloud」に関する年次イベント「Adobe MAX」を、米カリフォルニア州ロサンゼルス市にあるLACC(Los Angeles Convention Center)で開催した。
この中でAdobeは、同社が2020年に構想を発表したディープフェイクを防ぐ画像の規格策定を目指す業界団体CAI(Content Authenticity Initiative)とMicrosoftなどが中心になって同じような取り組みを進めてきた「Project Origin」とが共同で提唱している規格「C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)」に基づいたカメラを、ニコンとライカが開発意向を表明したことを明らかにした。
C2PAに対応したカメラは、画像をストレージに記録する段階でC2PAの仕様に基づいて暗号化した著作権情報をメタデータとしてファイルに記録する。そのため、著作権者に断わりなく勝手に改ざんして使うことや、「ディープフェイク」と呼ばれるAIが自動生成したデマの原因になる画像ではないのかなどを検証できるようになる。
Adobeが取り組んできたCAI構想–Exifデータとの最大の違いは
Adobeは、2019年に開催したAdobe MAXで、CAIの構想を明らかにした。今や社会問題となりつつあるディープフェイク(人工知能を利用した合成映像)や著作権で保護されている画像の改ざんを防ぐための仕組みとして提唱したものだ。
簡単にいってしまえば、コンテンツに公開化鍵で暗号化された著作権情報を付与することで、もともとの写真を作り出したのは誰なのか。また、その流通の過程で、たとえば写真のリサイズ、どこの部分を切り抜いたのかなど、どんな加工がされているの情報が記録される。そうした情報は、現在の写真のExifデータのように画像にメタデータとして保存されることになるが、Exifデータとの最大の違いは公開化鍵で暗号化されているため、CAIに対応したメタデータの改ざんは難しいという点にある。
その後、2022年1月にProject Originと共同で、CAIが提唱してきた規格をベースにしたC2PAを発表した。C2PAでは、メタデータの構造、暗号化鍵を利用した暗号化の方法などが規格化されており、今後C2PAに対応した編集ソフトの開発やカメラなどのハードウェアの設計、製造が可能になる見通しだ。
AdobeはすでにCAIの仕組みを採用したPhotoshopのベータ版を関係者などに提供しており、C2PAのメタデータを持った画像を編集して、履歴などをメタデータに保存することを可能にしている。CAI/C2PAの仕組みでは、著作権者の情報や編集履歴などは暗号化された形でメタデータとして保存されるため、編集ツール側がCAI/C2PAの仕様を満たしている必要があるのだ。仮に現行バージョンのPhotoshopなどのようにCAI/C2PAに対応していない編集ツールで画像を編集するとメタデータは消え、履歴などは追えなくなってしまう。
その場合でもメタデータを消したという履歴は残るため、何らかの改ざんが行なわれたことは追えるし、CAI/C2PAではオプションとしてメタデータをクラウドに保存することも可能だ。それは著作権者の選択次第で、画像ファイルにメタデータとして残せるほか、クラウドに保存することで、改ざんされたデータがインターネットに出回ってもクラウドにある履歴と照らし合わせることで、追跡が可能な仕組みになっている。
ニコンが語るCAI/C2PAに対応したカメラの仕組み
ニコン 映像事業部 UX企画部 参事 井上雅彦氏は「CAI/C2PAに対応したカメラでは、画像データ、Exifデータに加えて、暗号化されたCAI/C2PAのデータという三つのデータを一つのパッケージにする」とその仕組みを説明する。