東京, 10月09日, /AJMEDIA/
今年のノーベル平和賞にフィリピンとロシアの2人のジャーナリストが選ばれたことは、権力と闘う報道が平和な社会とは切っても切れない関係にあると、ノルウェー・ノーベル賞委員会が世界に向けて強い危機感を表明したと言える。偽ニュースがあふれ、報道そのものが信じられなくなった世界の行く末への再認識を促した。
ロイター通信は、今回の選考について「1935年のドイツの反戦記者カール・フォン・オシエツキー以来のジャーナリストへの授賞だ」と伝えた。オシエツキーは、第1次大戦後のベルサイユ条約に違反したドイツの再軍備を暴いたが、ナチス政権誕生後は収容所送りになった。
2011年のイエメンの女性活動家タワックル・カルマンさんのように肩書に「ジャーナリスト」を持つ平和賞受賞者もいないわけではなかった。しかし、今回のフィリピンの記者マリア・レッサ氏はドゥテルテ政権によって逮捕され、ロシアのドミトリー・ムラトフ氏は、アンナ・ポリトコフスカヤさんをはじめ同僚の死と隣り合いながら報道を続けてきた。
オシエツキー以来80年以上にわたり、報道を取り立てて平和と結び付ける意識が生じる必要はなかったのかもしれない。なぜ今、この2人なのか。人類が獲得した平和な現代社会を命懸けで守らなければいけなくなりつつある厳しい現実を、世界の報道界にも突き付けている。