東京, 9月28日, /AJMEDIA/
食品宅配のオイシックス・ラ・大地が実施している給食大手シダックスへのTOB(株式公開買い付け)が、こう着状態に陥ったまま10月5日の期限に近づいている。創業家と組むオイシックス、TOBに反対するシダックス取締役会の相互不信が強まり、大株主のファンドもTOBに応じる気配がない。打開案は見つからないままだ。
―シダックスってどんな会社?
以前はカラオケ事業のイメージが強かったけど、同事業から撤退し、2022年3月期は売上高の約半分を病院や介護施設などに給食を提供する「フードサービス事業」が占める。施設向け給食は外食と比べて「売り上げの変動が少なく常に一定の業績が見込める」(業界関係者)ため安定感があり、他社からも魅力的なんだ。
―これまでの経緯を教えて。
19年、経営危機に陥ったシダックスに投資ファンド「ユニゾン・キャピタル」が資本参加した。その際、ユニゾン保有株の売却先を志太勤一会長兼社長らシダックス創業家が指定できる契約が結ばれた。創業家は今年6月、オイシックスを売却先に指定。同社が8月30日にTOBを開始したが、創業家出身者らを除くシダックス取締役会は今月5日、TOB反対を決議したんだ。
―関係者の考えは。
シダックス取締役会は、外食大手コロワイドからの事業買収の提案などを十分に検討しないまま、創業家がオイシックスへの売却を「密室で決めた」(柴山慎一シダックス専務)と批判。ユニゾンも取締役会の賛同をTOB応募条件としている。これに対し、オイシックスは「ユニゾンはTOBに応じる義務がある」と主張している。
―今後の展開はどうなるの?
東京地裁は今月1日、ユニゾンに対し、オイシックス以外の第三者への株式売却を禁止する仮処分を決定。オイシックスはユニゾンが売却に応じない場合、創業家に法的措置を求める構えだ。さらに、コロワイドが14日に提案を撤回したことを受け、シダックス取締役会によるTOBへの反対は「前提を欠くことになった」と指摘している。
一方、ユニゾンはTOBに応じない姿勢を変えていない。シダックス取締役会も、ユニゾン保有株を自社で買い取り、改めて提携相手を検討したい考えだが、いずれにせよ創業家の意向が大きく影響するのは間違いなさそうだ。