熱気欠く「天王山」の沖縄知事選 意気消沈する保守、退潮のオール沖縄―辺野古既成事実化、かすむ争点

東京, 9月5日, /AJMEDIA/

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設の行方を左右する沖縄県知事選(11日投開票)は、推進を掲げる政府・与党と、反対で結集する「オール沖縄」が激突する沖縄選挙イヤーの「天王山」だ。ただ、7月の参院選敗北で勢いがそがれた自民党と、退潮傾向に歯止めのかからないオール沖縄の戦いにこれまでの熱気はみられない。辺野古への土砂投入が始まって3年9カ月。移設の既成事実化が進む中、争点はかすみつつある。
 ◇「工事止まらず」
 「辺野古は絶対に反対だ」。現職の玉城デニーは告示日の8月25日、埋め立て用の土砂が搬入される米軍キャンプ・シュワブのゲート前を訪れ、こう声を張り上げた。
 ダンプカーが1日3度、列をなして土砂を搬入し、反対派が座り込みを続ける「反辺野古」の象徴的な場所。だが、演説を終えた玉城は足早に現場を去った。ゲート前に立ちふさがり、土砂搬入を実力行使で止めようとする支援者の姿を見届けることはなかった。
 2019年の県民投票では移設反対が7割を占め、民意を国に突きつけた沖縄。しかし、政府は工事を続け、土砂投入量は1割ながら一部では「陸地化」が完了した。陣営は「軟弱地盤のある北側の埋め立ては玉城が止めている」と強調するが、座り込みの現場では「工事は止まっていない」と冷めた声も漏れる。
 玉城の後援会長を務めた経営者もオール沖縄から離反。新型コロナウイルス感染拡大で沖縄経済は打撃を受け、国と反目してまで移設反対を訴える余裕はなくなりつつある。
 陣営は「基地一辺倒」では広範な支持は集まりにくいとみて、都市部では子育て支援や女性政策も強調。玉城は8月21日、那覇市での集会では辺野古に言及せず、「私に取って代わる知事がLGBTQ(性的少数者)の条例化をするのか」と独自色をアピール、支援者から喝采を浴びた。関係者は「玉城人気に頼らざるを得ない」と語る。
 ◇「一からやり直し」
 「観光関連産業中心に1000億円規模の支援をしたい」。自民・公明両党の推薦を受ける新人・佐喜真淳は8月26日、那覇市中心部で支持を訴え、経済重視の姿勢を強調した。
 佐喜真は前回知事選で玉城に苦杯をなめ、捲土(けんど)重来を期し「移設容認」を打ち出した。ただ基地問題を前面に出すことはせず、保守が県政を奪還した1998年の知事選と同様に「県政不況」を訴え、政府と連携してコロナ禍からの復活を目指す姿勢を強調する。
 1月以降の市長選で勝利を重ね、当初は参院選の余勢を駆って現職相手の厳しい知事選に勝ち抜く戦略だったが、参院選での自民惜敗が重くのしかかる。陣営関係者は「一からやり直しになった」と漏らす。
 そもそも、佐喜真に対し7月の参院選に擁立する動きもあったが、本人が突っぱねた経緯がある。沖縄に影響力を持つ元首相・菅義偉も知事選候補の差し替えを求めたといい、陣営内には不協和音も残る。
 4年前は自民、公明両党が総力を挙げて組織戦を展開したが、今回はコロナ禍で活動が制約され、東京からの応援は細る。8月27日に糸満市の国道沿いに約200人の地元関係者が動員され、のぼり旗を持って支持を訴えた。陣営内には「企業の力の入れ方はこれまでにない感じ」との見方もあるが、肝心の期日前投票の動きは鈍いという。
 知事選と市町村議会選挙の日程が重なり、地元議員は自らの選挙に精いっぱい。公明党関係者は「今回は統一選に集中する」と漏らす。
 ◇標的は玉城
 選挙戦に割って入った元衆院議員・下地幹郎は、辺野古について「さらなる埋め立てに反対」と独自の立場を掲げる。かつて自民に所属していたため、自民関係者は「支持層は保守。1票でも減ると思えばもったいない」と警戒する。
 陣営関係者は「われわれの標的は玉城だ」と辺野古移設を止められないオール沖縄に照準を合わせる。ただ、4年前は佐喜真を支援しただけに訴えが浸透するかは見通せない。

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