アパレル、広がる人権・環境配慮 「エシカル消費」日本出遅れ

東京, 5月29日, /AJMEDIA/

 アパレル業界で、生産に携わる人の人権や自然環境に配慮した商品作りが広がっている。こうした品物を選んで買い求める「エシカル(倫理的な)消費」が支持され始め、ブランド価値の向上につながると期待されるためだ。かねて指摘されてきた人権侵害や環境破壊を改める契機になりそうだが、日本では海外に比べて浸透が遅れている。
 ▽自筆署名で「配慮」宣言
 天然素材を使った衣服などのブランド「イコーランド トラスト アンド インティメイト」は、綿花生産者やデザイナーらの自筆署名が入った「信用タグ」を商品に付けている。タグは、自然環境への負荷を減らす決意とともに、生産者の人権が守られていることを示す証しだ。
 アパレル業界では、2013年にバングラデシュで起きたビル崩落事故をきっかけに、劣悪な労働環境を見直す動きが世界的に強まった。昨年には中国・新疆ウイグル自治区で強制労働の疑いが表面化した。
 イコーランドは、こうした業界の負の側面を改める意志を信用タグに込めた。ブランド創設者の一人、古瀬伸一郎氏は「ファッション業界では作り手が虐げられ、怒ることもできなかった。タグは作り手への敬意も示している」と話す。
 ▽汚名返上へ待ったなし
 アパレル業界は低価格品の台頭による過剰生産・廃棄が問題視され、19年に国連貿易開発会議(UNCTAD)が石油業界に次ぐ「環境汚染産業」だと指摘した。原料や商品の生産に膨大な水を使い、焼却廃棄などで二酸化炭素を大量に排出するためで、自然環境への配慮は待ったなしだ。
 取り組みは徐々に広がっている。アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」を手掛けるゴールドウインは今秋、植物由来の人工タンパク質の糸を使ったフリースやデニムを発売。将来は、廃棄される綿製の服を原料に人工糸を生産する計画だ。生活雑貨店「無印良品」は自社の衣料品を店頭で回収して染め直し、現在は国内18店舗で販売する。
 ▽4分の3が「知らない」
 欧米では既にエシカル消費が根付いており、英国の食品などを含む市場規模は20年に約19兆円に達したと試算される。一方、電通が同年実施した意識調査によると、日本では「エシカル消費」という言葉を「全く知らない」と答えた割合が76%を占めた。
 調査を手掛けた電通の関智一ビジネスストラテジストは「日本では意識の高低が二極化している」と分析。普及に向け「消費者が無理なく買えたり、かっこよさなど実利があったりするものが必要だ」と、商品そのものの価値を上げる必要性も訴えている。

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