東京, 1月1日, /AJMEDIA/
1962年に世界で初めて小型ヨットでの単独無寄港太平洋横断を成し遂げた海洋冒険家の堀江謙一さん(83)=兵庫県芦屋市=が2022年3月、またも太平洋横断に挑む。日米両国民を驚かせ、体験記「太平洋ひとりぼっち」が話題となった最初の航海から60年。成功すれば世界最高齢記録となる。
堀江さんは高校時代にヨットと出会い、23歳だった62年に小型ヨット「マーメイド号」で同県西宮市の港から出航。94日間で約8500キロを横断し、米サンフランシスコに到着した。自由に海外旅行ができる時代ではなく、パスポートを持たない「密航」だったが、当時のサンフランシスコ市長は名誉市民として歓迎した。国内では一時非難も浴びたが、帰国後は一転、時の人となった。
堀江さんは「部活動の延長みたいな感覚で、世界一広い海をヨットで航海したいという思いだけだった」と振り返る。その後も、275日間かけての単独無寄港世界一周や、足こぎボートでのハワイ―沖縄間横断など数々の冒険航海を重ねてきた。
今回は原点となる60年前の航海を逆にたどり、サンフランシスコから約2カ月半かけて西宮市を目指す。合板製だったヨットはアルミ製になったが、船体の長さは初代マーメイド号と同じ5.83メートル。水洗トイレや小型キッチンを備え、発電用の太陽光パネルも搭載する。
積み荷の多くを占めるのは、水200リットルと食料品だ。60年前は灯油コンロを持ち込み、飯ごうで米を炊いたが、今回は湯を加えるだけの「アルファ米」やシリアルなどを食べる予定。本も20~30冊持参し、波が穏やかな時は読書をして過ごすつもりだ。
寝る場所は2カ所あり、船の傾きによって変える。油断すれば転覆の危険もあるが、堀江さんは「揺りかごのようで、ぐっすり眠れる」と話す。パソコンや衛星携帯電話も使えるため、家族と毎日連絡を取るという。
「60年たっても海は変わらない。年齢は経験でカバーできる」。83歳での挑戦について、堀江さんはあくまで前向きだ。「ヨット以外の趣味はない。100歳まで航海は続けるつもりだが、元気なうちにやろうと思った。健康さえ維持できれば問題ない」と笑顔で話した。
◇堀江謙一さんの航海
1962年 世界で初めて小型ヨットで兵庫―米西海岸の単独無寄港太平洋横断に成功
74年 西回りでヨットによる単独無寄港世界一周に成功
82年 4年かけて縦回りの世界一周に成功
85年 ソーラーボートでハワイ―父島間の太平洋航海
89年 世界最小ヨットで米西海岸―兵庫間の太平洋横断
93年 足こぎボートでハワイ―沖縄間の太平洋航海に成功
96年 アルミ缶リサイクルのソーラーボートでエクアドル―東京間の太平洋横断
99年 ビールたるを使ったリサイクルヨットで米西海岸―明石海峡大橋の太平洋横断
2002年 ウイスキーたるなどを使ったリサイクルヨットで兵庫―米西海岸の太平洋横断
05年 東回りで単独無寄港世界一周に成功
08年 波浪推進船でハワイ―紀伊水道間の太平洋航海
22年 世界最高齢の83歳で単独無寄港太平洋横断に挑む。