高揚感欠く習氏3期目 表面的な「忠誠」、しぼむ期待―中国

東京, 3月11日, /AJMEDIA/

【北京時事】中国共産党の習近平総書記は10日、全国人民代表大会(全人代)で国家主席として正式に3選された。表面上、習氏に「忠誠」を誓う高官ばかりで、体制は盤石に見える。しかし、かつて習氏に寄せられた大衆の期待はしぼみ、高揚感に乏しい3期目の始まりとなった。
習氏は10日、満票で国家主席に再選された。初めて国家主席に就いた2013年の全人代では、反対・棄権票が計4票あったものの、2期目の18年と今回はいずれもゼロ。同日選挙が行われた全人代常務委員長ら6ポストのうち、反対・棄権票は李鴻忠・全人代副委員長に対する計2票。3期目の習体制はほぼ100%の支持を得た形となった。
 だが、体制内の結束は完全とは言えない。習氏は「反腐敗」の名の下に政敵を次々と追い落とし、地方勤務時代からの忠実な部下らを要職に起用してきた。一方で、米国との対立は安全保障や経済に悪影響を及ぼし、「習氏の手法に不安を感じる中堅官僚が増えている」(外交筋)と指摘される。
 習氏が進めた「反腐敗」に拍手喝采を送った大衆の心も離反し始めている。昨年10月の党大会直前、北京市内の高架橋に習氏の罷免を要求する横断幕が登場。さらに、厳格な行動規制を伴う「ゼロコロナ」政策の撤廃を求めるデモなどが発生した。習指導部は、力ずくで反対意見を抑え込む方針を変えず、デモ参加者らを拘束した。
 ◇「聖地」の失望
 習氏は、建国の父、毛沢東を意識した言動が目立つ。昨秋、総書記として3期目入りした直後、習氏は最高指導部メンバーを連れ、陝西省延安を訪問した。延安は建国前、毛が拠点とした「革命の聖地」だ。習氏は延安で、毛の旧居などを視察。「先輩が残した伝統を受け継ぐ」と演説し、自らが毛の「正統な後継者」だとアピールした。
 延安は、習氏が青年期に下放された地でもあり、習氏の「原点」を見学に訪れる人は多い。それだけに当局は習氏の権威を守るために神経をとがらせている。記者が2月末、習氏らの視察先を訪れると、当局とみられる複数の要員に常時監視され、一般客との接触をしばしば阻まれた。
 習氏と延安のつながりは地元の誇りだ。それでも、市民の一人は、声を潜めて語った。「(ゼロコロナ政策で)多くの資源を投入したが、良い効果は出なかった」。「習氏の聖地」でも失望感は広がっている。

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