震災乗り越え、伝統を受け継ぐ 400年以上続く「揚げ浜式」製塩―石川・珠洲

東京, 6月29日 /AJMEDIA/

 石川県珠洲市でくみ上げた海水を砂地にまく真酒谷淳志さん(29)。作業を見詰めるのは、400年以上続く「揚げ浜式」製塩の技術を守る「珠洲製塩」社長の山岸順一さん(88)だ。能登半島地震から半年を迎える中、若手とベテランの塩作りにも力が入る。

 入社2年目の真酒谷さんは、社員10人が働く山岸さんの会社で最年少。力仕事から商品の販売もこなし、先輩社員からも頼りにされる。

 元日の地震発生時、工場は倒壊こそ免れたが、煙突は曲がり、釜が割れるなど大きな被害を受けた。真酒谷さんは、両親らと初詣に訪れた神社で被災。輪島市内の自宅は全壊し、避難所生活を強いられた。知人を震災で亡くしたのもつらかったという。

 「辞めても怒らんぞ」。真酒谷さんが職場に戻ったとき、山岸さんは疲弊した後輩を気遣った。2月、塩作りを再開した山岸さんを手伝えず、歯がゆかった真酒谷さん。お客に早く塩を届けるため、仕事をする山岸さんの姿勢に、背中を押された。

 現在、真酒谷さんは仮設住宅から通勤が困難なため、製塩所に住み込みで働く。1日に作れる塩の量は平均20キロと震災前に比べ、2割程度。工場再開の知らせに全国から応援が寄せられ、1カ月で1年分の注文が届き、生産が追い付かない状態だ。

 「地震でいろんなものを失ったが、塩作りの伝統だけは絶やさない」と話す真酒谷さん。山岸さんは「2、3年では一人前にはなれないが、ここが頑張りどき」とひたむきに仕事に励む若手にエールを送った。

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