東京, 10月03日, /AJMEDIA/
【北京時事】中国で電力不足の深刻化が景気の足かせになるとの懸念が強まっている。電力供給の制限で工場の操業停止が相次ぐなどの影響が出ており、製造業の景況感は悪化。不動産開発大手・中国恒大集団の経営危機と合わせ、経済の重しとなっている。
電力不足の主因は品薄状態の石炭だ。中国はエネルギーの3分の2を石炭で賄うが、炭鉱事故続発による規制強化などを受けて石炭生産が鈍る一方、製造業の石炭・電力需要は旺盛で、需給逼迫(ひっぱく)に拍車が掛かっている。東北部では停電が頻発するなど、冬場を前に不安が高まっており、李克強首相は9月末、「電力供給を保証する」と述べ、安定供給に全力を挙げる姿勢を示した。
環境対策の強化も電力供給を抑える要因となっている。政府は各地方にエネルギー消費削減目標の達成を求めているが、国家発展改革委員会が8月、目標未達の省・自治区を指摘したことで、名指しされた広東省や江蘇省が達成に向けて電力供給を一気に制限。日系を含む多くの企業が工場の操業停止などを余儀なくされた。
景気への影響も表れている。国家統計局が発表した9月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は49.6に低下し、景気の拡大・縮小を判断する節目の50を1年7カ月ぶりに割り込んだ。統計局の専門家は「エネルギー消費の大きな業界で景況感が落ち込んだ」として、電力不足の影響を認めた。減速懸念が強まる中、米ゴールドマン・サックスなど証券各社は相次いで経済成長率予想を引き下げている。
ただ、習近平国家主席が二酸化炭素(CO2)排出量を2060年までに実質ゼロにする目標を国際公約に掲げる中、エネルギー消費削減目標の達成は義務となっており、手綱を緩めるのは難しい。電力の供給制限は今後も続く可能性が高いとみられる。