険しい停戦実現の道 途上国の支持広がらず―ウクライナ平和サミット

東京, 6月18日 /AJMEDIA/

ウクライナ和平案を協議した平和サミットは16日、共同宣言発表にこぎ着けた。ロシアによる侵攻が長期化し欧米で「支援疲れ」が広がる中、ウクライナのゼレンスキー政権は事態打開に向けた国際社会の結束誇示を狙った。だが、対ロシア関係を重視する新興国の支持獲得は壁に直面。停戦実現への道のりの険しさを浮かび上がらせた。

 ◇「大成功」誇示

 「ウクライナとすべてのパートナーにとって、大きな成功だ」。ゼレンスキー大統領は会議後の記者会見で胸を張った。サミット直前にはロシアの妨害工作で参加が80カ国を下回るとの観測も流れたが、最終的に約100の国・組織が代表を派遣したためだ。

 参加国からも「国際社会と密接に協力し、取り組みを継続する」(岸田文雄首相)、「必要な限り、われわれを頼りにし続けられる」(イタリアのメローニ首相)、「いつまでも頼りにしてほしい」(アイルランドのハリス首相)といった応援メッセージが相次いだ。支援を継続する西側諸国の決意を改めて強調した。

 ◇残る「支援疲れ」懸念

 とはいえ、欧米での支援疲れに対するゼレンスキー氏の懸念が払拭されたわけではない。今月の欧州連合(EU)欧州議会選で圧勝したフランスの極右政党・国民連合は、ウクライナ支援よりも国内優先を訴える。ドイツで伸長した極右政党はゼレンスキー氏の独議会演説を欠席。今秋の米大統領選で支援に後ろ向きなトランプ前大統領が返り咲く可能性もあり、欧米での選挙結果はウクライナの命運を左右しかねない。

 さらに、ロシアを批判する欧米主導の会議となったことで、中国は欠席。インドや南アフリカ、サウジアラビアなど発言力を増す新興・途上国「グローバルサウス」を代表する諸国も共同声明への署名を軒並み拒否した。ロシアに近い諸国が支持しやすいよう、共同声明にはウクライナの領土回復や戦争責任追及などの文言が盛り込まれなかったにもかかわらず、今後の国際協調に影を落とした。

 ◇国内でも厳しい見方

 そうした中、ウクライナ国内ではゼレンスキー氏に対する厳しい見方が増えている。キーウ国際社会学研究所が7日発表した世論調査結果によると、ゼレンスキー氏を「信頼する」と答えた国民は59%。2022年2月のロシア侵攻開始後で初めて6割を切った。反転攻勢の不発、国民からの人気が高かった軍制服組トップの解任、閣僚が絡む汚職事件などが響いているとされる。

 本来5月だった任期切れ後も職にとどまるゼレンスキー氏について、ロシアのプーチン大統領は正統性を疑問視する発言を繰り返す。国内および国際社会の結束がほころび、ゼレンスキー氏の指導力が一段と弱まるようなら、停戦協議の早期実現はさらに遠のきかねない。

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