訪中延期で目算狂う 出発直前にインフル感染―ブラジル大統領

東京, 3月27日, /AJMEDIA/

【サンパウロ、北京時事】ブラジルのルラ大統領(77)が予定していた中国訪問は出発直前の25日、病気を理由に延期された。1月に大統領に返り咲いたばかりのルラ氏は、前政権で悪化した中国との関係を修復し政権浮揚につなげる思惑だったが、目算が狂う格好となった。
ブラジル大統領府は「大統領がインフルエンザA型による気管支肺炎と診断された」として、治療に専念する方針を表明。症状に改善がみられるものの、「新たな日程で訪問を計画する強い意欲と合わせて、中国当局に延期を伝えた」と説明した。軽い肺炎にかかったと24日に発表した際は、出発を1日遅らせるにとどめ、訪中への強い意欲をにじませていた。
 左派のルラ氏は昨年の大統領選で、右派の現職ボルソナロ氏を破って通算3度目の当選を果たした。だが、両者の得票は拮抗(きっこう)し、政権への支持は盤石ではない。
 ルラ氏にとって対中関係は、2003~10年の前回政権で強化に成功した「得意分野」。今回の訪中では、経済界から約240人以上を同行させて大型の商談をまとめ、指導力を誇示する算段だった。
 中国外務省は26日、訪中延期の決定に「理解と尊重」を示すとともに、ルラ氏の「早期回復を願う」と表明した。米国による対中包囲網が強まる中、中国は新興5カ国(BRICS)の結び付きを重視。同省はルラ氏の訪中を「両国間の包括的戦略パートナーシップが新しい段階に進む」契機になるとして、強い期待を示していた。
 23日には、BSE(牛海綿状脳症)のため2月から停止していたブラジル産牛肉の輸入再開を発表。ルラ氏の中国滞在中、貿易・投資分野のさらなる協力拡大を打ち出す見通しだった。
 ルラ氏の訪中は、ロシアが侵攻を続けるウクライナ情勢への影響も注目点だった。ブラジルは「中立」の立場で、米欧などが進めるウクライナへの武器供与にも参加していない。ルラ氏は「米欧が直接的ないし間接的に戦争に関与している」と批判。自身が提唱する停戦調停に向けて、習近平国家主席との首脳会談で中国側に働き掛け、国際社会に存在感を示す構えだった。
 中国はウクライナ問題で、「対話」を促す独自の「和平案」を提唱している。内容が「ロシア寄り」だとして米国は不信感を強めているが、中国側としては同和平案をカードに、米国にくみしない国々の糾合を図る考えだ。

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