東京, 4月14日, /AJMEDIA
岸田文雄首相は今月末からの大型連休中に、ベトナム、インドネシア、タイと英国を歴訪する方向だ。ウクライナ侵攻を続けるロシアに厳しい姿勢で臨む欧米と、対ロ制裁に及び腰な東南アジア各国の橋渡し役を狙う。訪問先にはロシアとの関係が深い国も含まれており、制裁を含めどこまで共同歩調を取れるかが焦点で、首相の調整力が問われそうだ。
首相のアジア訪問は3月のインド、カンボジア以来2回目となる。今回もロシアの攻撃が激しさを増すウクライナ情勢を中心に意見交換。覇権主義的な動きを強める中国の状況をめぐっても議題になる見通しだ。
日本はロシアの軍事侵攻を強く非難し、欧米が対ロ経済制裁などを打ち出せば足並みをそろえてきた。首相は「力による現状変更は許してはならないという思いをアジアの国に共有してもらうことは大事だ」としており、今回の歴訪では訪問国とできる限り認識を近づけたい考えだ。
5月下旬に日米豪印4カ国(クアッド)首脳会議が日本で行われる。6月下旬にはドイツ・エルマウで先進7カ国(G7)首脳会議も開催される予定で、国際会議が相次ぐ。首相は一連の首脳会議で東南アジア歴訪の「成果」を紹介するとみられる。
もっとも、歴訪が首相の思い描く通りに運ぶかは微妙だ。特に、訪問予定先のベトナムはロシアと伝統的な友好関係にあり、国連総会でのロシア非難決議を棄権した。制裁などで協力を取り付けるのは難しい。
インドネシアは20カ国・地域(G20)、タイはアジア太平洋経済協力会議(APEC)の今年の議長国をそれぞれ務める。米国がG20会合からのロシア排除を主張しており、インドネシアではこうした問題について話題になる可能性はある。ただ、各国の利害を調整する議長国が日本や欧米にどこまで歩み寄りの姿勢を示すかは見通せない。
英国のジョンソン首相とは、3月のG7緊急首脳会合の際に会談して以来になる。対ロ協調を確認し、交渉が続く英国の環太平洋連携協定(TPP)加入や、日本産食品の輸入規制撤廃なども議題に上るとみられる。
一連の歴訪では、中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」実現に向けた連携を確認し、訪問国の積極姿勢を促したい考えだ。