曖昧決着の「外交ボイコット」 米中双方に配慮―日本政府

東京, 1月6日, /AJMEDIA/

 日本政府は、北京冬季五輪に政府代表団の派遣を見送る。日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長や東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長ら五輪関係者の出席にとどめる。新疆ウイグル自治区などの人権問題を前面に押し出す米国などと足並みをそろえつつ、国交正常化50年の節目を迎える中国への配慮もにじませた。
 当初は「自ら判断する」と強調していた岸田文雄首相だったが、「外交ボイコット」を発表したのは松野博一官房長官だった。松野氏は昨年12月24日の定例記者会見で「国際オリンピック委員会(IOC)の招待」を受け、山下氏らが出席すると説明した。
 一時検討された室伏広治スポーツ庁長官の派遣を見送った理由には、新型コロナウイルス対策を真っ先に挙げた。松野氏は「厳格な行動制限がなされ、日本選手団へ直接激励できない」と指摘。「外交ボイコット」の呼称を使わない意向も示した。
 米英などが外交ボイコットを相次ぎ表明する中、日本政府も閣僚派遣には慎重だった。昨年の東京五輪で中国が派遣したのは苟仲文・国家体育総局長。閣僚級だが、共産党の上位約200人を占める中央委員の一人にすぎず、外務省幹部は「政治トップとの距離が日本の閣僚とは全然違う」と指摘していた。
 苟氏は中国オリンピック委員会主席を兼務しており、JOC会長の山下氏を派遣すれば同格とアピールできる。五輪相経験者の橋本氏も国会議員だが政府関係者ではないことから、山下、橋本両氏の派遣を「落としどころ」とした。
 日本政府の対応について中国外務省は「スポーツを政治化しないという約束を実行するよう日本側に促す」と注文を付けつつも、「歓迎」を表明。日本政府関係者は「人権を理由にすれば中国は反発しただろうが、今回の件で日中間の緊迫感は高まらなかった」と平静を装った。
 首相は1日放送のラジオ番組で中国に対し「言うべきことはしっかり問題提起をする」と強調する一方で、密接に絡み合う両国経済にも触れ「関係を安定させなければならない」と語った。北京五輪対応は事なきを得そうだが、覇権主義的な動きを強める中国とどう向き合っていくか、岸田外交の手腕が問われる。

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