日本初の月面着陸目指す探査機に搭載 カメラ運用模擬訓練 滋賀

東京, 11月29日, /AJMEDIA/

来年1月から2月にかけて日本初の月面着陸を目指す探査機「SLIM」に搭載されているカメラを運用するための模擬の訓練が、28日、滋賀県にある大学の施設で公開されました。

月探査機「SLIM」はことし9月に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、来年1月下旬から2月上旬ごろにかけて日本初となる月面着陸に挑む計画です。

月面に着陸したあとは、謎の多い「月の起源」の解明につなげるため、月面の岩石に含まれる鉱物の種類などの測定が計画されています。

28日は、こうした測定を行う「SLIM」に搭載されている「マルチバンドカメラ」を運用するための模擬訓練が、滋賀県にある立命館大学の施設で行われました。

訓練にはJAXA=宇宙航空研究開発機構や立命館大学のメンバーなどおよそ10人が集まり、「SLIM」に搭載されているものと同じカメラを遠隔で動かし、撮影する範囲を変える操作手順を確認しました。

また、実際にカメラで測定できるのは月着陸後の数日間に限られる見込みで、スムーズな運用が鍵となることから、カメラで撮影したデータをもとに遠隔で明るさなどを調整する訓練も行われました。

「マルチバンドカメラ」を開発した立命館大学宇宙地球探査研究センターの佐伯和人センター長は、「今回の測定は月や地球の起源など多くの謎の解明に役立つ。着陸まで訓練を重ね、今回の機会を最大限に生かしたい」と話していました。

月面着陸 JAXA「成功すれば今後の宇宙開発に道」
探査機「SLIM」による日本初の月面着陸とその後の探査について、JAXA=宇宙航空研究開発機構の開発責任者、坂井真一郎プロジェクトマネージャがNHKの取材に応じました。

JAXAの月探査機「SLIM」には、立命館大学などが開発した岩石の成分などがわかる「マルチバンドカメラ」が搭載されていますが、撮影するには目的の岩石の近くに着陸する必要があります。

このため「SLIM」には、狙った場所に誤差100メートル以内で降り立つことができる「ピンポイント着陸」と呼ばれる独自の技術が搭載されています。

「SLIM」が月の上空を飛行するスピードは時速5700キロにもなるということで、着陸の難しさについて、坂井プロジェクトマネージャは「例えるなら通常の8倍ほどの速さで飛行する旅客機を、甲子園球場のマウンドを目指して着陸させるようなもので、かなり難しいチャレンジになる」と説明しました。

そのうえで、今回の調査の意義について「月の岩石の成分が地球と似ていれば、月が地球から分かれてできたという仮説を強めることになる。逆に、成分が全く違うなら、外からやってきたものが地球に引き寄せられて月ができたという説が有力になり、月の成り立ちを知るうえで重要な手がかりが得られるはずだ」と話しました。

また、世界で月探査の競争が激化していることについては、「これまでは探査機を安全に着陸させることを優先して降り立つ場所を選んできたが、これからは地球での地質調査と同じように、探査の目的に合わせて着陸する場所を選ぶ時代になっていくだろう。探査機を狙った場所に着陸させる技術を、日本が確立できれば、国際協力で進める宇宙開発に参加しやすくなり、今後の宇宙開発に道を開くことになる」と期待を語りました。

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