文化庁、試される地方創生 省庁移転への関心低下も

東京, 3月28日, /AJMEDIA/

文化庁の京都移転は、中央省庁の機能を地方に本格的に移す初のケースで、安倍政権が2014年に打ち出した「地方創生」の目玉事業だ。東京とのリモート会議や出張を駆使する体制に不透明さも残る中、国の行政を地方から変える先進事例となるかが試される。
政府機関の移転は14年の国の地方創生戦略に盛り込まれ、翌年政府は全国の自治体に提案を募集。有識者会議の議論を踏まえ、16年に省庁や研究・研修機関の取り組みが決まった。消費者庁は徳島に、総務省統計局は和歌山に地方拠点を置く「部分移転」、文化庁は一部を東京に残しつつ、主要機能を京都に移す唯一の「全面移転」とされた。
 都倉俊一文化庁長官は27日、記者団に「京都のブランド力は非常に大きい。東京から世界に日本の文化芸術を発信するのと京都からとは、意味合いが違ってくる」と移転の意義を強調した。
 ただ、想定外の出来事も。宗教団体を所管する宗務課は京都に移る予定だったが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への対応で当面東京に残る。永岡桂子文部科学相は「一定の区切り」がつけば京都に移ると強調するが、時期は見えない。同課に限らず、今後同庁に絡む大きな案件が起きれば短期出張では乗り切れず、京都の職員が一時的に東京に移る可能性もあるという。
 一方で地方創生の本来の目的である東京一極集中の是正は進んでいない。新型コロナウイルス感染拡大で東京都への転入者が転出者を上回る「転入超過」は21年に激減したが、22年は大幅に増加。東京23区内の大学の定員増を認めない規制も、デジタル人材の払底を背景に、24年度にも緩和されることが今年2月に決まった。
 16年当時は高かった省庁移転への関心も薄れている。有識者会議の座長を務めた増田寛也元総務相は、差し迫った新型コロナ対応で国が対策を主導してきた20年以降、「地方行政がやや国依存になってきた」と指摘する。
 政府は4月以降、国機関の地方移転の総括評価を行う。移転先の地域の経済効果などを検証する方針で、増田氏は「ここでプラス効果が出れば、関心度が変わってくるかもしれない」と語る。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts