工場建設、住宅地も押し上げ 被災地は先行き不透明―公示地価

東京, 3月23日, /AJMEDIA/

国土交通省が公表した公示地価では、都市部だけでなく地方部でも上昇範囲が広がり、新型コロナウイルス感染拡大前への回復傾向がはっきり表れた。けん引役となったのは、地方での新工場建設や球場の完成で、商業地だけでなく周辺の住宅地の地価も押し上げた。その一方、災害の被災地では人口減少の影響もあり、下落に歯止めがかかっていない。
半導体受託製造最大手TSMC(台湾積体電路製造)が新工場を建設中の熊本県菊陽町。周辺の共同住宅や事務所の需要が急増し、商業地に加え住宅地も大幅に上昇した。隣接する同県合志市と大津町も住宅地の地価が大きく伸びた。菊陽町の担当者は「特に集合住宅の建設が活発になっていて、開発できる土地が少なくなってきている」と話す。
 プロ野球日本ハムファイターズの新球場が完成した北海道北広島市。全国の地価上昇率上位10地点のうち、住宅地は5地点、商業地は2地点を同市が占めた。住宅地でトップとなった同市共栄町の地点は30%の上昇率を記録。国交省の担当者は「北広島市は札幌市のベッドタウンでもともと需要があった。今年は新球場の開業でさらに地価が上がった」と説明する。
 今回の公示地価では、札幌、仙台、広島、福岡の4市を除く地方圏で、住宅地は33.8%、商業地は32.4%の地点が上昇。地方圏でも地価の回復が進んでいることがうかがえた。ただ、国交省幹部は「調査対象の全国2万6000地点のうちの約5割がコロナ前の価格よりも高い状況にあるが、5割弱はコロナ前の水準に戻っていない」と指摘する。
 例えば2019年の台風19号で浸水被害を受けた長野市赤沼の地点は6.9%下がり、住宅地の下落率上位に位置している。20年に豪雨災害のあった熊本県人吉市では、市全体の平均下落率は縮小したが、浸水被害があった地点は下落率が拡大した。国交省の別の担当者は「人口減少や高齢化が進んでいる地域もあり、復興が進んでも直ちに地価の上昇に結び付くかは分からない」と話しており、先行きは見通せない状況だ。

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