東京, 8月26日, /AJMEDIA/
ロシアと北大西洋条約機構(NATO)が対峙(たいじ)し、緊張が高まる欧州北方バルト海のスウェーデン領ゴトランド島で、島の防衛を担う同国軍ゴトランド連隊のマグナス・フリクバル司令官が時事通信の取材に応じた。司令官は、ロシアの飛び地カリーニングラードに近く、戦略的に重要な同島を奪われれば「バルト海の大半が(ロシアの)支配下に置かれる」と警告。地域の安定確保のため島の防衛強化を加速させる必要性を強調した。主なやりとりは次の通り。
―ロシアの脅威をどう見るか。
(ウクライナ侵攻以前の)半年前ならロシアにスウェーデンを攻撃する力があったが、侵攻で能力は低下した。しかし脅威は依然存在する上、ロシアのプーチン大統領は政治目的達成のため軍事力を使う意思を明確にしており、大きな不安定要因であることに変わりない。
あす侵略されることはないだろうが、1、2年先どうなるかは予測が付かない。十分な防衛体制を築くには時間がかかる。数年後に増大する脅威に備えるなら、今から準備を始める必要がある。
―ロシアの行動が島の軍備増強を招いた。
間違いなくそうだ。「近い将来に戦争は起きない」という考えに基づき、島からは2005年に常備軍がいなくなった。今はすぐそこに(戦争のリスクが)ある。ウクライナ危機はわれわれの安保環境への見方を劇的に変えた。
戦争などないと考えているうちは、多額の予算を国防に使うことを疑問に思いがちだ。しかし侵攻で戦争のリスクが目に見えるようになり、国民の大多数が「強い防衛力を持つのは良いこと」と考えるようになった。
―なぜゴトランド島は重要なのか。
島はバルト海の真ん中に位置しており、島を確保すればバルト海全体を制することができる。もしロシアが島を手に入れ、ミサイルシステムを配備すれば、NATOがバルト諸国を支援することが困難になる。加えて島はカリーニングラードまで300キロの距離だ。バルト海で軍事作戦に乗り出すならまずゴトランドを確保する必要があり、そこに島の戦略的重要性が存在する。
―スウェーデンのNATO加盟申請の意義は。申請で脅威は増大したか。
1国より(申請中のフィンランドも含め)32カ国の方が強いのは明白で、加盟は良いこと。スウェーデンは既にパートナー国だが(集団防衛の)保障はない。例えば車の保険で、半分の保障と完全な保障を得ているのでは違いが大きい。加盟は安全のための保険だ。
ロシアはわれわれにNATOに入ってほしくない。だから潜在的に危険な状態ではある。加盟までの移行期間の備えも必要だ。だがロシアは今ウクライナに集中しており、二つの大規模作戦を同時に行うのは不可能だ。
―ロシアはカリーニングラードに核搭載可能なミサイルシステムを配備し核をちらつかせている。
ロシアは核大国であり、脅威が存在するのは確かだ。しかし実際に核戦争を始めるのは大きな決断を要する。核戦争の危険はないとは言えないが、核を使えば重大な結果が待っていることをプーチン氏は知っているはずだ。