少子化反転へ施策総動員 実現には高いハードル

東京, 4月1日, /AJMEDIA/

岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」のたたき台が31日まとまった。経済的支援では児童手当の拡充や出産費用の保険適用、奨学金制度や住宅支援の拡充といった幅広い内容を明記。共働きを後押しするための育児休業給付の引き上げも打ち出した。ただ、制度見直しを伴う施策も多く、調整には一定の時間が必要だ。実現に向け、優先順位をどう判断するかなど課題は多い。
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 たたき台は首相が1月、小倉将信こども政策担当相に策定を指示。児童手当拡充や働き方改革などに関しては自民党の提言も反映させた。首相は「これから6年から7年が少子化傾向を反転できるかのラストチャンス」としており、政権の危機感を背景に、施策を総動員させた。
 しかし、柱の一つである児童手当の所得制限撤廃には「金持ち優遇」との慎重論が根強い。対象の線引きや増額規模を巡って与党内でも意見が分かれており、意見集約には難航が予想される。
 出産費用の保険適用は関連費用を一律化し、公平な治療を提供する狙いがあるが、実際には地域や病院により費用の格差が大きく、保険対象や基準の設定は容易ではない。原則として「病気」が対象となる医療保険制度との整合性や、保険適用で生じる3割負担分をどう支援するかも課題だ。
 両親の就労要件をなくして保育所利用を可能とする「こども誰でも通園制度」は、子育てで孤独を感じる保護者らの支援につながると期待されるものの、保育士の配置基準も含めた抜本的な見直しが必要だ。
 政府はたたき台を基に、今後3年間で集中的に取り組む「加速化プラン」を策定。4月以降、首相をトップとする会議で財源を含めた議論を本格化させる方針だ。
 たたき台について、少子化対策専門の松田茂樹・中京大学教授は「今までの少子化に欠けていた部分を大幅に拡充した。首相は本気だと思う」と評価。その上で「子育てのしやすさは制度だけで達成できない」とし、社会全体の意識醸成に向けた働き掛けが重要になると指摘した。

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