東京, 10月23日, /AJMEDIA/
世論調査に焦る甘利幹事長
異例中の異例だろう。自民党は10月21日、甘利明幹事長と遠藤利明選対委員長の連名で「急告 情勢緊迫」と題した文書を、衆議院選挙を戦う各陣営に送付した。理由は各メディアが報道した序盤情勢だ。たとえばNNNと讀賣新聞が行った共同調査によれば、自公では過半数を獲得するものの、自民党が単独過半数を維持するのかは微妙とされている。
岸田文雄首相は10月14日の会見で勝敗ラインを聞かれ、「与野党で過半数」と答えた。すでに9月29日のぶら下がりでも岸田首相は同様に答えているが、自民党の現有議席は276議席で、公明党の29議席を加えれば与党は305議席となる。過半数となる233議席には72議席も余裕があるが、だからといってそこまで減らしていいわけではない。
もっとも議席を減らしたところで、総理総裁に就任したばかりの岸田首相には大きな責任は課せられない。代わりに党内で責められるのは、幹事長の甘利氏だ。
9月の総裁選前には安倍・麻生・甘利の「3A」のうち末席にいた甘利氏だが、早くから支持した岸田首相の誕生で頭ひとつ抜きん出た。そして公認権や党の財務を掌握する幹事長に高市早苗元総務大臣を押し込もうとした安倍晋三元首相の圧力をはねのけ、自分がその座を確保した。
そもそも「菅義偉首相では自民党は大きく議席数を減らす」ということで、岸田首相が誕生したはずだった。にもかかわらず大きく議席数を減らしたら、その存在意義はなくなってしまい、さらには幹事長たる甘利氏の責任問題に発展しかねない―。
しかしこのような通達で、引き締めは可能なのか。確かに野党は289ある小選挙区のうち217選挙区で候補を一本化し、非自民票を集めようとしている。これまで僅差で勝利してきた自民党の議員は、たまったものではないだろう。
かつては大人気だったが…
そればかりではない。自民党自体も変容しているのだ。たとえば党内一の人気者で「自民党の選挙応援の最終兵器」とされた小泉進次郎前環境大臣は、かつてその登場とともに歓声が飛び、観衆を酔わせていたが、最近ではすっかり陰りを見せている。
たとえば21日午前に池袋で行われた鈴木隼人氏の街宣だ。メインは小泉氏の応援演説だったが、平日の昼間であったものの、集まったのは約60名程度。そのほとんどは、地元の自公の地方議員や支持者などのようだった。
しかも話が面白くない。小泉進次郎といえば演説の最初にご当地話題で聴衆を惹きつけ、父親譲りの話芸でうっとりさせたものだったが、それがない。そもそも「応援した候補は勝つ」と言われていた小泉氏だが、今年7月の都議選で応援した堀宏道候補は落選。9月の自民党総裁選でも、小泉氏が応援した河野太郎前ワクチン担当大臣が落選した。
こんな話もある。ある議員が「小林鷹之経済安保担当大臣に応援に来てもらいたい」と言ったので、「小泉進次郎氏はどうか」と尋ねたら、その議員は黙ってしまった。ちなみに小泉氏は2014年12月に小林氏の選挙応援に駆け付け、津田沼駅南口で1000人以上の観衆を切れの良い小泉節で大いに沸かせた。