実現遠い核燃料サイクル 再処理延期、最終処分地も未定

東京, 3月27日, /AJMEDIA/

政府は「核燃料サイクル推進」を2月に閣議決定した「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」で堅持した。しかし、サイクルの要となる日本原燃の六ケ所再処理工場(青森県六ケ所村)の完成は延期が続き、高レベル放射性廃棄物の最終処分地は未定。サイクル実現は依然見通せない。
再処理は、原発の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出すこと。六ケ所工場は日本初の商業用再処理施設として1993年に着工したが、完成が26回延期され、現在の目標は2024年度上半期。設備トラブルなどで遅れていた上、東京電力福島第1原発事故を受け、原子力規制委員会が新規制基準に適合しているか審査中だ。
 工事は全体の99%まで進んだが、規制委で設備の耐震性などを確認する審査が続く。日本原燃は自己責任で火災感知器の設置など残る工事を進めているが、審査結果次第ではやり直しを迫られる。
 この間、総工費は安全対策を含め約3兆2000億円と当初計画の4倍超に拡大。全国の原発の敷地内で保管されている使用済み核燃料は増え続け、貯蔵能力の約8割に達した。岸田文雄政権は今夏以降、原発7基の追加再稼働を目指すが、保管場所がなくなれば原発は動かせなくなる。見切り発車で再稼働を急いでも、六ケ所工場の稼働が重い課題として残る。
 工場で取り出すウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料を既存の原発で利用するプルサーマル実施には地元同意が必要となる。現状は全国4基の導入にとどまる。政府は交付金制度を新設して推進する方針だが、受け入れに動く自治体が現れるかは不透明だ。
 最終処分地の選定は難題のままだ。選定の第1段階に当たる文献調査を受け入れているのは現在、北海道の2町村のみ。政府は2月の関係閣僚会議で「政府の責任」を明確化し、自治体への働き掛けを強化する基本方針をまとめたが、地域の理解を得る道は険しい。NPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長は「核燃料サイクルは破綻している」と指摘する。

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