東京, 6月5日, /AJMEDIA/
アゼルバイジャンのアバソフ・エネルギー省次官が首都バクーで日本経済新聞社のインタビューに応じ、2023年の欧州などへの天然ガス輸出がロシアによるウクライナ侵攻前(21年)に比べて3割近く増える見通しを示した。
カスピ海に面する資源国には、ガス調達先の多様化を進める欧州連合(EU)からの引き合いが強まっている。アバソフ氏は「欧州では発電用途のガス需要が大きい」と述べた。
ウクライナ侵攻の長期化で、EUはロシア産天然ガスへの依存から脱却する方針を示している。アゼルバイジャンと22年7月に締結した覚書では、EUの輸入量を27年までに少なくとも年間200億立方メートルに増やす方針を決めた。
アバソフ氏によると、23年のガス輸出は約240億立方メートルを見込んでいる。輸出量は侵攻前の21年比で28%増、前年比でも8%増となる見通しだ。EU向けにはパイプラインをフル稼働させて全体の5割弱となる約110億立方メートルを輸出する計画で、他にトルコ向けなどの輸出も増える。
アバソフ氏は輸出量の拡大に向けた課題として「(アゼルバイジャンからギリシャ、イタリアにガスを運ぶ)主要パイプラインの工事に4〜5年が必要だ」と述べ、追加投資など準備を急ぐ考えを示した。新規のガス田開発も進め、欧州への供給に振り向けられるとみている。
アゼルバイジャンは隣国アルメニアと30年以上続くナゴルノカラバフ紛争を抱える。20年9月の紛争再燃でトルコの軍事協力を受けたアゼルバイジャンが攻勢を強め、大半の地域を支配下に取り戻した。23年5月にはアルメニアのパシニャン首相がナゴルノカラバフについてアゼルバイジャンの領土の一体性を公に認めている。
アバソフ氏は紛争地域について「(アゼルバイジャンが)2020年に領土の一体性を回復した後、復興作業が進んでいる」と指摘、エネルギーインフラの整備に向けた複数の水力発電所の建設や太陽光発電事業が活発になっていると述べた。「トルコや欧州に発電した電力の供給を検討している」という。
6月1、2日にバクーで開催されたエネルギーフォーラムには欧州委員会のエネルギー政策担当者や東欧諸国の閣僚らが出席した。ウクライナ侵攻の長期化を受けてエネルギー調達の多様化を求める声が目立った。
ルーマニアのポペスク・エネルギー相はロシアのウクライナ侵攻が世界中に電力・ガス危機を引き起こしたと指摘、エネルギーの輸送などで各国と連携する考えを示した。
欧州委員会のエネルギー政策担当者はエネルギー安全保障上、ガス供給の多様化が重要と述べた。EUはアゼルバイジャンからの天然ガス調達のほか、米国から液化天然ガス(LNG)の調達を増やしている。
EUは22年2月のロシアのウクライナ侵攻以前、全体の4割にあたる約1500億立方メートルのガスをロシアから輸入していた。