増える女性兵、支える市民 制服や物資、前線に―「できることをやる」・ウクライナ

東京, 2月15日, /AJMEDIA/

 ロシア軍のウクライナ侵攻開始以降、ウクライナでは軍に入隊する女性が急増した。制服をはじめ不足する女性向けの物資支援に、市民が一役買っている。国を守ろうと戦う兵士のために「自分たちもできる支援をやる」との思いが、人々の背中を押した。
 ◇侵攻直後に入隊
 マルハリータ・リフチャチェンコさん(25)は侵攻開始翌日の昨年2月25日、ウクライナ軍に入隊した。議員の広報を務めた経験を生かし、東部ドネツク州などで軍の広報を担当。現在は腰痛を抱え、治療のため首都キーウ(キエフ)に滞在する。
 東部の前線付近で働き始めた時は「死ぬかもしれない。何をやっているんだろう」と悩んだこともあった。「でも、何もしないのは嫌だった。国を助けたかったし、将来家族を持ちたくても、ロシアが国を占領したら、それができないと思った。1年前に戻っても同じ選択をする」と断言する。
 ウクライナ軍に所属する女性兵は3万8000人以上で、そのうち約7000人が侵攻開始後に加わったという。急増した女性兵に必要な物資が軍には十分なく、リフチャチェンコさんは「男性用の大きい制服を着るしかなかった」と振り返る。
 ◇無料で提供
 女性兵を支援するNGO「ゼムリャチュキ」のキーウの拠点には、制服やブーツなどの物資が山積みになっている。いずれも企業などからの寄付を通じ入手したもので、無料で現場の女性に届けられる。
 共同創設者アンドリイ・コレスニクさん(37)は、兵士として前線にいる妹のために支援を呼び掛ける活動を開始。やがて女性兵からの要望で、物資を詰めた箱を前線に届けるようになった。女性一人一人からSNSなどで必要な物資を聞いて届けているが、「送り先の女性が(荷物を受け取る前に)死亡したことが、後になって分かることもある」と表情を曇らせる。
 ◇ないなら作ろう
 他の団体と協力しながら活動を広げ、8月には夏用の制服やブーツなどをトルコの業者に発注した。だが、女性用の制服を作る適当な業者が見つからず、頼んだのは男女兼用だった。
 「男女兼用では女性の体にフィットしない。だから女性用を作ることにした」。コレスニクさんはウクライナ国内の縫製工場を探し、西部ウジホロドの工場の協力を得て女性用の制服をデザイン。さらに北東部ハリコフの工場に依頼し、秋用として400着が生産された。その後、冬用の生産にも着手した。ハリコフの工場は従業員の半数が侵攻に伴い住宅を失った人で、制服の発注は避難民や工場経営の支援にもなっている。
 侵攻開始から1年が近づく中、女性兵の物資は依然不足している。コレスニクさんは「政府は軍に兵器を供給する。女性用の制服が足りないなら、問題だと叫ぶのではなく、自分たちができることで支援するだけだ」と話している。

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