危機再来に身構える市場 インフレ・金融不安「二重苦」―米銀破綻

東京, 3月18日, /AJMEDIA/

【ワシントン、ニューヨーク時事】米シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻から17日で1週間。2008年のリーマン・ショック後で最大規模となる銀行破綻劇に市場は大きく動揺し、スイス金融大手クレディ・スイスの経営問題にまで飛び火した。インフレに伴う景気後退懸念に加え、金融システム不安という「二重苦」に見舞われ、市場は金融危機の再来に身構えている。
「国民の血税は使わない」。バイデン米大統領は13日の演説で、破綻したSVBとシグネチャー銀行の米中堅2行に公的資金を注入せず、代わりに預金の全額を保護すると表明した。背景には、自身が副大統領を務めていたオバマ政権で金融危機対応に多額の税金を使い、批判を招いた苦い教訓がある。
 インフレ抑制のために欧米の中央銀行が進める急激な利上げで保有債券に含み損を抱えるのは、金融界共通の構図だ。だが、米政権が今回の破綻処理で株主や投資家を早々に切り捨てたことが市場に疑心暗鬼を生み、「収益力の弱い金融機関を探す展開」(米エコノミスト)となっている。
 米ブルームバーグ通信によると、米国ではこの1週間で地方銀行から大手行へ数百億ドル(数兆円)規模の預金が流出。中堅地銀ファースト・リパブリック銀行に大手11行が計300億ドル(約4兆円)を支援する異例の事態に発展した。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、米国の銀行システムの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げている。
 さらに世界同時株安の引き金となったのが、業績不振が続くクレディ・スイスだ。16日にスイス国立銀行(中央銀行)から最大500億スイスフラン(約7兆2000億円)を調達すると発表したが、国内の競合相手でもあるUBSグループとの合併協議が難航するなど、経営再建の先行きは不透明だ。
 世界最大の資産運用会社ブラックロックのフィンク最高経営責任者(CEO)は、一部の投資家が低金利時代に多く投資した高リスク商品が次の危機を引き起こし、「ドミノ倒し」を招きかねないと警告。米銀破綻に端を発した信用不安の連鎖は、景気後退におびえる世界経済に一段と暗い影を落としている。

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