東京, 5月27日, /AJMEDIA/
国連安全保障理事会は26日午後(日本時間27日午前)、公式会合を開き、北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受け対北朝鮮制裁を強化する米国主導の決議案を採決したが、中国とロシアが拒否権を行使して否決された。残る13理事国は賛成した。
安保理は北朝鮮が1回目の核実験を行った2006年以降、対北朝鮮制裁決議を10回採択。いずれも全会一致だった。北朝鮮への制裁決議案に拒否権が使われ、廃案となったのは初めて。ウクライナ情勢をめぐる米欧と中ロの対立が激化する中、安保理の機能不全が改めて露呈した。
トーマスグリーンフィールド米国連大使は採決前の演説で、北朝鮮が今年に入りICBMを6発発射したと米国は分析していると指摘した上で「国際社会全体の平和と安全に対する脅威だ」と糾弾。「今こそ行動の時だ」と決議案に賛成するよう呼び掛けた。
これに対し、中国の張軍国連大使は採決後の演説で「状況を総合的に分析し、熟慮した末の判断だった」と説明。制裁強化は北朝鮮市民に苦痛をもたらすだけだと主張した。ロシアのネベンジャ国連大使も「新たな制裁の導入は袋小路に続く道だ」と強調。中ロとも制裁強化は問題解決に役立たないという考えを示した。
安保理が最後に制裁を科したのは2017年12月。この決議には北朝鮮が再び核実験やICBM発射などを行った場合には「石油の輸出をさらに制限するための行動を取る」と明記されていた。今回の決議案は、北朝鮮による原油と石油精製品の年間輸入量の上限をいずれも25%削減することを柱としていた。
北朝鮮は今年3月、米全土を射程に収めるとされるICBMを発射した。自国の安全保障に直結する事態を受け、米国は直後に開かれた安保理会合で、追加制裁を提案すると表明。各理事国と交渉を続け、今月中に採決する意向を明らかにしていた。
公式会合には石兼公博国連大使も関係国として出席し、否決という結果を「心から残念に思う」と2度繰り返して悔しさを吐露。前回の決議に定められた「さらなる行動」が取れなかったことは一貫性を欠いており、「安保理の信頼性を著しく損なう」と訴えた。