共同声明10年、見直し論も 政府・日銀、問われる連携―物価目標実現せず

東京, 1月21日, /AJMEDIA/

 政府・日銀がデフレ脱却と持続的な経済成長に向けた連携強化を定めた共同声明を発表してから22日で10年となる。2%の物価目標実現に向け、日銀が大胆な金融緩和を行う根拠ともなってきたが、物価目標はいまだに実現していない。岸田文雄首相は政府・日銀の連携について、4月に任期満了となる黒田東彦日銀総裁の後任との間で確認する考えを示しており、今後見直しの是非も含め共同声明の在り方が問われそうだ。
 共同声明は2013年1月、当時の安倍晋三政権が白川方明前総裁時代の日銀との間で締結した。円高に苦しんでいた日本経済がデフレから抜け出せないのは、日銀の金融緩和が不十分なためといった意見が国会などで噴出していた。経済財政担当相を務めていた自民党の甘利明前幹事長は「中央銀行の独立性は尊重するが、デフレ脱却という方向性を共有することが声明の最も重要な意義」と声明作成時を振り返る。
 声明から2カ月後に黒田総裁が就任すると、大量の国債購入による異次元の金融緩和がスタート。2%物価目標の早期実現を狙った。当初は、株価上昇や円高の修正による企業収益の改善が進んだが、10年近く経過した現在、物価目標は実現していないというのが日銀の説明だ。20日公表された昨年12月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比4.0%上昇。日銀も18日に22年度の物価上昇率見通しを上方修正したが、黒田氏は「物価目標を持続的に達成できる状況になっていないことは残念に思う」と話している。
 今後は、岸田政権と総裁交代後の日銀との間で共同声明をどう位置付けるかが焦点だ。政府の一部では見直し論も浮上するが、「間違ったメッセージを与えるのでは」(甘利氏)などと慎重意見は多い。一方、物価目標実現を「できるだけ早期に」目指すとする部分などの一部修正については「議論の余地がある」(日銀関係者)との見方も聞かれる。
 昨年12月の経済財政諮問会議では、民間議員を務めるBNPパリバ証券の中空麻奈氏が声明の検証の必要性を指摘した。中空氏は、政府と日銀の目的に大きな違いはないとして「そもそも共同声明が必要なのか、ということから考えないといけない」と話している。
 岸田首相は1月3日に放送されたラジオ番組で、「新しい日銀総裁と、どういった約束で政策を進めていくのか、連携の在り方をしっかり確認する」と述べた。政府と近く陣容が固まる日銀新体制の間で声明を巡る議論が活発化しそうだ。

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