仏のインド太平洋戦略に打撃 大統領選にも影響―豪潜水艦計画破棄

東京, 9月24日, /AJMEDIA/

【パリ時事】オーストラリアが米英との間でインド太平洋地域における安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を新設し、フランスとの潜水艦開発計画を破棄したことで、豪州を同地域での安全保障戦略の柱としていたフランスは、戦略の再構築を迫られている。再選を狙うマクロン仏大統領の来年の大統領選戦略にも影響が及びそうだ。

 マクロン氏は、米国に頼らない「強い欧州」の実現を掲げている。インド太平洋地域で米中の覇権争いから距離を保つ独自路線を模索してきた。

 フランスはインド洋や南太平洋に幾つも海外領土を持つ。フランスの排他的経済水域(EEZ)の90%以上は実はインド太平洋地域に存在する。

 このため、中国の海洋進出への警戒は強く、一方的な領有権主張を厳しく批判してきた。

 2018年にフランスが策定したインド太平洋地域での安全保障に関する指針では「第三の道」戦略を掲げている。マクロン氏は今年6月の記者会見で「中国に従うことも米国になびくこともせず、独立した道を歩みたい」と強調した。

 本土から遠く離れたインド太平洋地域で影響力行使の足掛かりとするため、米中以外の国々との軍事的かつ政治的な協力関係を構築してきた仏戦略の中核となったのが、今回破棄された潜水艦共同開発で16年に合意していた豪州だった。

 国際関係専門の政治学者ブルーノ・テルトレ氏は時事通信の取材に対し「インド太平洋でのフランスの権益は大きく、合意が破棄されてもプレゼンスは維持しなければならない」と強調。ラファール戦闘機の輸出実績があるインドが「もう一つの柱だ」と指摘した。

 仏大統領府によると、マクロン氏は今月21日、インドのモディ首相と電話会談し「開かれた包括的なインド太平洋地域で共に行動していく」ことで一致。ルドリアン仏外相もこれに先立つ18日、ジャイシャンカル印外相と電話会談し「戦略的協力関係の深化」で合意した。

 仏紙ルモンドによれば、インドの専門家らは、中国が対抗してパキスタンに原子力潜水艦を配備する事態を警戒している。今回の米英豪の動きに不快感を抱く点はインドも共通しているとフランスに期待感を抱かせる。
 豪州の合意破棄については反省の声も上がっている。仏政治学者ドミニク・モイジ氏は仏紙レゼコーに対し「仏政府は豪州が抱える対中脅威を過小評価していた」と述べた。米英豪の動きを事前に察知できなかったことも「軍事外交の失敗」(ルモンド紙)と受け止められており、大統領選を前にマクロン外交が改めて問われる事態となっている。

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