ロレアルがAIで目指す、「自分に合う化粧品」の新しい選び方

東京, 6月7日 /AJMEDIA/

 「TikTok」上のインフルエンサーが、保湿剤や美容液、コンシーラーをお勧めしているのを見かける。輝く夏の自分になれるというふれ込みだ。その製品を買って試してみるが、自分には合わないことが分かる。吹き出物ができたり、脂性肌が余計脂っぽくなったり、他のスキンケア製品となじまなかったりする。

 必ずしも、そのインフルエンサーがうそを言ったというわけではない。肌のタイプが全く違うだけだ。あるいは、肌のタイプは同じでも、なぜだか分からないが特定の成分が自分には合わないのかもしれない。

 スキンケアや美容についての情報が過剰なほどあふれている今、必要な情報を得ようとして似たようなことを経験した人は多いだろう。もちろん、筆者もその一人だ。スキンケア製品の成分ラベルを読むには化学の学位を持っていないといけないのか、と感じることすらある。もうそろそろ、美容製品も、もっと各自に合ったスマートな買い方を編み出すべきときではないか。ありがたいことに、L’Orealがその期待に応えようとしている。

 今やどんな業界を思い浮かべても、そのほとんどで人工知能(AI)が導入されつつあるが、美容企業も例外ではなく、AI技術を利用して、一人一人に最適な製品を見つけられるよう試みている。筆者はちょうど、パリで開かれた「Viva Technology」カンファレンスに参加してきたところだ。そこでL’Orealが、AI主導の一連のツールを紹介していた。スキンケアの分析から、髪の色や健康の分析、さらには製品を推奨したうえに拡張現実(AR)を利用して「試用」させてくれるチャットボットまで、あらゆる機能が約束されている。

 AIが化粧品についての悩みを解決してくれる可能性に注目しているのは、もちろんL’Orealだけではない。化粧品小売大手のSephoraもAIを活用したショッピング体験を導入しており、本当に必要な製品を見つけ出すという、途方に暮れてしまいそうなこともある過程を支援しようとしている。こうした取り組みの多くは、道なかばの試みだが、化粧品を買うときに困りはてることが多い消費者の一人として、各社が何を目指そうとしているのかは理解できるし、それを期待している。

 「美容業界は、化学だけなら1000年の歴史を持つが、ハイテクの活用については10年の歴史しかない」。こう語るのは、その10年の間L’Orealでテクノロジー育成部門を率いてきたGuive Balooch氏だ。この10年間、同社は新興技術を大々的に研究し続けており、メイクアップの支援技術などのプロダクトで「CES」の賞を獲得したこともある。

 しかし、過去10年で同社が学んだ教訓もあった。ある時点で期待できると思えそうなトレンドに飛びついても、それが尻すぼみに終われば、結局はカスタマーリレーションシップについても製品についても何の足しにもならないということだ、とBalooch氏は言う。技術上の新しいトレンドが出現するたびに、表面的にだけ美容を当てはめるのではなく、技術によって美容業界の問題を解決する道があるのかどうかを模索することが重要なのだ。

AIを活用する「Beauty Genius」アプリ
 技術によって美容業界の問題を解決するということこそ、L’Orealが、AIを活用する同社の新しいアプリ「Beauty Genius」で達成できたのではないかと期待している点だ。Beauty Geniusは今のところ、スタイリストを自分のポケットに入れて連れ歩けると言えるのに最も近いアプリである。「基本的に重要なのは、実はAIそのものではない。消費者が何を必要としているかを理解し、美容に関するしきたりにこれまでずっとつきまとってきたストレスを緩和することだ」、とBalooch氏は話している。

 筆者が、このアプリで個人的に最も関心を持っているのは、肌の状態の変化、例えば目の下のクマが前の日より悪化したといったことを診断できる機能だ。そのうえで、毎日決まっているお手入れや化粧を調整できるように、そのときその場で使うといい製品を勧めてくれる。

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