東京, 10月07日, /AJMEDIA/
ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)は5日、国際宇宙ステーション(ISS)で映画を撮影するため、俳優と監督を乗せた宇宙船を打ち上げた。同じくISSで映画撮影を計画しているアメリカに先んじての出発で、宇宙開発競争において異なるアプローチでリードを奪った格好だ。
俳優ユリア・ペレシルド氏(37)とクリム・シペンコ監督を乗せた宇宙船「ソユーズMS-19」は、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、3時間後にISSに到着した。
出発時には、テレビカメラがペレシルド氏と、安全な場所から見守る娘のアナさん(12)を映し出すなど、ショービジネス的な一面もあった。また、シペンコ監督は宇宙飛行に向けて15キロ減量したという。
ロシア紙コムソモルスカヤ・プラヴダは、俳優を宇宙に送り出したのはハリウッドではなく、ラクダやジリスが生息するカザフステップ(草原地帯)だったと伝えた。
アメリカでは、米航空宇宙局(NASA)と俳優のトム・クルーズ氏が、ISSでの映画撮影を計画している。
ソユーズMS-19は現地時間午前11時55分に打ち上げられた。同乗したアントン・シュカプレロフ宇宙飛行士は打ち上げ後、「クルーの調子は良い」とコメントしている。
ソユーズは3時間強でISSに到着したが、自動ドッキングシステムが作動しなかったため、シュカプレロフ氏が手動でドッキング作業を行った。
シュカプレロフ氏には通常、エンジニアの補佐がつく。しかし今回、同乗した2人は、即席の訓練は受けたものの、補助はできなかった。
ISSのロシアが保有する区画では、すでに滞在中の7人が、3人を出迎えた。
ロスコスモスのディミトリイ・ロゴツィン所長はツイッターで、「ハッチが開いた! すべては予定通りだ」と報告した。
ペレシルド氏とシペンコ監督は12日間で撮影を終える予定。ペレシルド氏は、宇宙飛行士を助けるために軌道に送られた心臓外科医を演じる。このほか、ISSに滞在しているオレグ・ノヴィスキー飛行士とピョートル・デュブロフ飛行士も撮影に参加するという。
撮影はISSのロシア区画で行われるが、この映画自体が同国の宇宙開発業界で議論となっている。
映画の発案者であるロスコスモスのロゴツィン所長は、このプロジェクトの是非をめぐり、有人飛行計画のトップだったセルゲイ・クリカレフ氏を罷免(ひめん)した経緯がある。
しかしクリカレフ氏の罷免をめぐり大きな反発があったため、同氏は数日で復職した。
「ISSに観光客の居場所はない」
BBCロシア語の取材に応じたミハイル・コルニエンコ宇宙飛行士も、この計画には反対だったと話した。
「ISSには役者やあらゆる道化、そして観光客の居場所はない。ISSは巨大な宇宙研究所で、プロの仕事を邪魔してはいけない」
この映画には、ロシアのテレビ局チャンネル・ワンが出資している。またロスコスモスの子会社は、映画製作に連邦予算は入らないだろうと述べている。
ロスコスモスではここ数年、極東の宇宙基地建設をめぐる汚職が発覚するなどトラブルが続いている。
ISSで使用される多目的実験モジュール「ナウカ」も、14年遅れの2021年夏に、ようやくISSへと到着した。
一方でロシア政府は、ISSの老朽化を理由に、今後4年以内の撤退を示唆している。