フランス、年金改革で激震 マクロン大統領の求心力低下―デモ激化、英国王の訪問延期

東京, 3月27日, /AJMEDIA/

【パリ時事】フランスが年金改革を巡る混乱に揺れている。マクロン大統領は年金支給開始を現在の62歳から64歳に引き上げる法律の年内施行を目指すが、国民の7割は反対し、政権の求心力が著しく低下。一部の若者や過激派は、労組の抗議行動に乗じて路上で暴力行為を繰り返し、事態収拾のめどが立たない状況だ。
「健康な体で定年を迎えたいだけだ」。首都パリの鉄道員ステファーヌ・ジトさん(47)は、デモに参加した理由を語った。定年がわずか2年延びるだけでも、体力が必要な現業労働者の間では不安が大きいという。
 就職前の世代も声を上げる。パリの学生エロイーズ・ソテーさん(18)は「改革を受け入れると、定年がなし崩し的に延長されていきそうで怖い」と明かした。
 ただ、年金支給が64歳に引き上げられても、欧州の主要国ではまだ早い方だ。ドイツはメルケル前政権下で65歳から67歳への延長を決定。英国では現在の66歳が数年後に67歳になる。仏国民への共感は周辺国で広がっていない。
 マクロン政権は1月に年金改革を正式提案後、再三のデモやストにも譲歩を拒否。関連法案の採決で下院の過半数確保が危うくなると、憲法の特例規定を行使し、投票なしで通過させる強行措置に踏み切った。昨春の大統領選で年金制度見直しを公約に掲げ再選されただけに、何としても改革を実現させる構えだ。
 しかし、国民感情を無視した強権発動は火に油を注ぎ、若者や過激派による夜間の抗議がエスカレート。パリでは作業員のストで路上に山積みとなったごみが放火され、繁華街で商店の窓ガラスが無差別にたたき割られた。デモ隊との衝突で400人を超す警官が負傷した日もあり、26~29日に予定されていたチャールズ英国王の仏公式訪問は、警備上の懸念から急きょ延期が決まった。
 1月の世論調査では、マクロン氏の提案に反対でも「改革は必要だ」と6割が認めていた。しかし、今や冷静に議論する雰囲気は消え、感情論や「増幅された怒り」(仏メディア)が社会に充満。「打倒マクロン」を掲げる極右や急進左派など、極端な主義主張の有力野党が国民をあおり、抗議行動を過激化させている面もある。

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