バイデン政権、「和解」仲介へ積極外交 大統領選見据え中東安定化―サウジ・イスラエル国交正常化

東京, 9月3日, /AJMEDIA/

【ワシントン時事】サウジアラビアとイスラエルの国交正常化に向け、バイデン米政権が仲介外交を活発化させている。アラブの「盟主」を自任するサウジがイスラエルと「和解」すれば、中東の安定化が前進。来年11月の大統領選で再選を目指すバイデン大統領にとって大きな外交成果となるが、実現にはハードルも待ち受ける。
 ◇3カ国の思惑
 サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は7月27日、紅海に面したサウジ西部ジッダを訪れ、事実上の最高権力者ムハンマド皇太子と会談した。両者の会談は5月以降、公表されたものだけでこれが2回目。短期間での実施に、バイデン氏が「取引が可能か見極めるよう、ゴーサインを出した」(米紙ニューヨーク・タイムズ)との受け止めが広がった。
 イスラエルは2020年、トランプ前米政権の仲介の下、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、モロッコなどのアラブ諸国と次々と国交樹立で合意。この流れを受け継いでサウジとの関係も正常化すれば、安全保障環境が一層改善し、「共通の敵」イランへの圧力にもなる。
 一方のサウジは正常化を「手札」に、バイデン政権からの見返りを狙う。米メディアによれば、(1)民生用原子力での協力(2)安保面での関係強化(3)武器売却の拡大―を求め、イスラエル側にはパレスチナ問題での譲歩を迫っているもようだ。
 ◇カギ握るパレスチナ
 オバマ政権下の国家安全保障会議(NSC)で中東・北アフリカ担当上級部長を務めたスティーブン・サイモン氏は「サウジは(イスラム教二大聖地の)メッカやメディナを擁する。20年の時より利益も衝撃も大きい」と、イスラム圏に及ぼす影響の重要性を指摘。来年の大統領選でトランプ前大統領との再対決に備えるバイデン氏にとって、「大きな成果」となり得ると解説する。
 中国が今年3月にサウジとイランの関係修復を仲介し、中東での影響力を増していることも、米国にとって気がかりだ。カーツァー元駐イスラエル米大使は、交渉を成功させれば「外交力は強まる」と述べ、米国が中東地域で再び存在感を高める契機になると説明する。
 ただ、身内の民主党議員の間では、人権重視の立場からサウジ皇太子への接近に批判的な見方も根強い。パレスチナ国家樹立に反対する極右政党が参加するイスラエルのネタニヤフ政権が、パレスチナ問題でどこまで譲歩するかも不透明だ。
 サウジにとっても、パレスチナの理解を得られないままイスラエルとの国交樹立を進めれば、「盟主」として厳しい立場に追い込まれる。カーツァー氏は「ワイルドカード(不確定要素)は、常にパレスチナ問題だ」と強調している。

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