東京, 10月08日, /AJMEDIA/
【ロンドン時事】スウェーデン・アカデミーは7日、今年のノーベル文学賞をタンザニア出身の作家、アブドゥルラザク・グルナさんに授与すると発表した。授賞理由として「植民地主義の影響や難民の運命に関する、妥協なく思いやりにあふれた洞察」を挙げた。アフリカ出身者の文学賞受賞は、2003年のJ・M・クッツェーさん(南アフリカ)以来。村上春樹さんは受賞を逃した。
グルナさんは1948年生まれ。インド洋のザンジバル島で育ち、60年代末に難民として英国に渡った。21歳の時に亡命者の立場で執筆活動を始め、母国語のスワヒリ語ではなく英語を用いた。これまで10冊の小説を出版し、多数の短編小説を発表。各作品の底流にあるのは、難民の混乱というテーマだ。
植民地時代以前のアフリカへのノスタルジーからは距離を置く作風。近年まで英国のケント大で英語とポストコロニアル(植民地以後)文学の教授を務め、ナイジェリアの詩人で86年にアフリカ人として初めてノーベル文学賞を受けたウォーレ・ショインカさんや、同賞の有力候補とされるケニアの作家グギ・ワ・ジオンゴさんらの文学を研究した。
賞金は1000万スウェーデンクローナ(約1億2700万円)。授賞式は12月10日にストックホルムで行われるのが恒例だが、新型コロナウイルス対策のため昨年に続き今年も受賞者は居住国でメダルと賞状を受け取る。