東京, 12月23日, /AJMEDIA/
パレスチナ・ガザ地区での戦闘の停止をめぐる交渉が難航するなか、イスラエルで行われた世論調査で、戦闘の停止と人質の解放を交換条件にした取り引きについて6割を超える人が支持すると回答し、世論の多数が交渉を支持していることが浮き彫りになりました。
イスラエルやパレスチナに関する、日本時間12月23日の動きをお伝えします。
国連 “イスラエル軍の攻撃で物資搬入に滞り”
ガザ地区の人道状況をめぐり、国連のグテーレス事務総長が22日、国連本部で記者会見し「ガザの人たちの切実なニーズを満たし、いまも続く悪夢を終わらせる唯一の方法が人道的な停戦だ」と述べ、停戦の必要性を改めて訴えました。
また、国連安保理でガザ地区への人道支援を拡大するための決議が採択されたことについては「きょうの決議が停戦を最終的に実現させるのに役立つことを期待しているが、いますぐにでも必要とされていることが数多くある」と述べ、人道状況の改善に向けて一刻も早い対応を呼びかけました。
一方、グテーレス事務総長は「問題は、イスラエルの攻撃方法がガザ地区での人道支援物資の流れに大きな障害をもたらしていることだ」と述べ、イスラエル軍の攻撃によって物資の搬入が滞っているという認識を示し、支援活動にあたるスタッフらの安全を確保するようイスラエルに求めました。
「戦闘停止と人質解放で交渉」イスラエル世論調査で支持多数
イスラエル軍はガザ地区南部の地上部隊を増やしてイスラム組織ハマスへの攻勢を強めていますが、今もおよそ130人が人質になっているとみられています。
こうした中、イスラエルの新聞「マーリブ」が22日に伝えた世論調査によりますと「戦闘を停止する引き換えに人質を解放する取り引きをもう一度行うことに賛成か反対か」という質問に対し、67%が賛成、22%が反対と回答し、世論の多数が交渉を支持していることが浮き彫りになりました。
また、イスラエルの首相にはネタニヤフ首相と野党党首のガンツ前国防相のどちらがふさわしいかとの質問では、ガンツ前国防相が46%、ネタニヤフ首相が34%と依然としてガンツ前国防相の支持が高いものの、ネタニヤフ首相の支持は前回の調査から3ポイント上がっています。
調査では前回の選挙でネタニヤフ首相が党首を務めるリクードに投票した層でネタニヤフ首相への支持が伸びていると伝えています。
ガザ地区南部“1トン爆弾によるとみられるくぼみが208個”
アメリカの新聞「ニューヨーク・タイムズ」は21日、AI=人工知能を使ってガザ地区南部の衛星写真などを分析した調査報道の結果を報じました。
それによりますと戦闘が始まってから6週間が経過した時点で、ガザ地区南部ではイスラエル軍が投下した1トン爆弾によるとみられる円形のくぼみが208個、確認されたとしています。
記事ではアメリカ軍が1トン爆弾を人口が密集した地域に投下することは現在、ほとんどないとする専門家の指摘を伝えています。
ガザ地区の保健当局によりますとガザ地区での死者数はすでに2万人を超えていて、民間人の犠牲は膨らみ続けています。
国連安保理 ガザ地区への人道支援拡大決議案を採択 米ロが棄権
国連安全保障理事会でパレスチナのガザ地区への人道支援を拡大するための決議案の採決が行われ、15か国のうち日本やイギリス、フランスなど13か国が賛成、アメリカとロシアが棄権し、決議案は採択されました。
イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突が始まって以降、国連安保理で事態打開を目指す決議が採択されたのは2回目です。
国連安保理では22日、日本時間の23日未明に緊急会合が開かれました。
安保理では、ガザ地区への人道支援を拡大するための決議案をめぐり、各国が鋭く対立して採決が4日連続で延期される異例の事態となっていましたが、UAE=アラブ首長国連邦とアメリカが決議案をとりまとめ、提出しました。
決議案は、急速に悪化しているガザ地区の人道状況に深い懸念を示した上で、人道支援を大規模に増やすために敵対行為の停止に向けた条件をつくるよう求めているほか、ガザ地区に搬入される支援物資の監視や調整などを行う国連調整官を任命するよう求めています。
会合でははじめに、ロシアが決議案のさらなる修正を求め、採決が行われましたが、アメリカが拒否権を行使してロシアの提案は否決されました。
その後、決議案の採決が行われ、15か国のうち日本やイギリス、フランスや中国など13か国が賛成、アメリカとロシアが棄権し、決議案は採択されました。
イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突が始まって以降、国連安保理で事態打開を目指す決議が採択されたのは、先月(11月)15日に続き、2回目でガザ地区で民間人の犠牲が増え続けるなか、安保理として人道状況の改善に取り組むようイスラエルに迫った形です。
一方、決議が採択された後、イスラエルの国連次席大使は「安保理はまずテロ組織の脅威を取り除くことに取り組むべきだ。ハマスの能力を排除するというわれわれの使命は変わらない」などと主張していて、今回の決議が事態の打開につながるかどうかは不透明です。
アメリカ国連大使 採択歓迎もイスラエル擁護の姿勢
アメリカは、決議案の修正が必要だとして採決の延期を繰り返し求めながらUAEとの間で決議案をとりまとめ、採決では、拒否権を行使せず、棄権にまわりました。
拒否権を行使しないことで採択を容認した形です。
決議が採択されたあと、トーマスグリーンフィールド国連大使は「この人道危機について安保理が一致して発信したことは喜ばしいが、ハマスのテロ攻撃を非難できなかったことには、アメリカは深く失望している。ハマスは恒久的な和平に関心がない。だからこそ、国民をテロ行為から守るイスラエルの権利をアメリカは支持する」と述べ、決議の採択を歓迎しながらも、イスラエルを擁護する姿勢を改めて示しました。
イスラエル「決議を実行に移すよう呼びかける」
国連安全保障理事会でパレスチナのガザ地区への人道支援を拡大するための決議案が採択されたことを受けてイスラエル軍のハガリ報道官は22日、記者会見で「決議はハマスに捕らえられた人質について、無条件かつ即時の解放や必要な医療を提供するための人道的なアクセスを認めることを要求している。私たちは国際社会や国際機関に対し、この決議を実行に移すよう呼びかける」と述べました。
ハマス「不十分だ 戦争止めるための決意含まれていない」
一方、イスラム組織ハマスは決議について「不十分で、イスラエル軍という『テロ製造機』が作り出したガザ地区の壊滅的な状況に必要なことを満たしていない。とりわけガザ地区のパレスチナ人に対する大量虐殺のような戦争を止めるための国際的な決意が含まれていない」としたうえでアメリカがイスラエルのために決議を骨抜きにしたと批判しました。
ロンドン 停戦訴えるデモ「クリスマスの間も殺りく止まらない」
クリスマスを前に、イギリスの首都ロンドンに親子連れなど数百人が集まってデモを行い、ガザ地区での一刻も早い停戦を訴えました。
このデモはパレスチナの人権擁護のため活動するグループが即時停戦を求めて呼びかけ、22日、ロンドンのウェストミンスター寺院の前に親子連れなどおよそ200人が集まりました。
集まった人たちは、飼い葉おけの中で眠る幼いキリストの姿のかわりにガザ地区のがれきに見立てた灰色の空箱などを並べ、パレスチナ伝統の敷物「クーフィーヤ」に包まれた手作りの人形を飾り、キリスト生誕の場面を表しました。
そして、パレスチナが置かれる苦しい状況を盛り込んだクリスマスキャロルの替え歌を歌いました。
また、集まった人たちは即時停戦を支持しないイギリス政府に抗議するため、「ガザへの空爆をやめろ」などと声を上げながら、外務省の前まで行進しました。
2歳の息子を抱いた女性は「ガザの子どもたちは絶え間なく空爆されている。母親として、いま起きていることを見ることに耐えられない」と話していました。
主催者のパレスチナ人の女性は「世界中でクリスマスを祝いイエス・キリストの誕生を祝福しているが生誕の地とされるパレスチナは空爆され人々が殺されている。当局者たちが(クリスマスの)休暇に出かけている間もガザでの殺りくは止まらないと伝えたかった」と話していました。
病院ボランティア「民間人や学校、病院が標的に」
パレスチナのガザ地区にある「インドネシア病院」で医薬品や食料を配布するボランティアを続けてきたインドネシア人の男性がNHKの取材にオンラインで応じました。
人口のおよそ8割がイスラム教徒のインドネシアは長年、パレスチナを支援していてイスラエルとは外交関係がありません。
ガザ地区北部にある「インドネシア病院」はインドネシアの人道支援団体「医療緊急救助委員会」が資金援助をして建設され、2015年から稼働していてます。
フィクリ・ロフィル・ハクさん(24)は2020年からこの病院でボランティアを続け、いまもガザ地区にとどまっています。
フィクリさんは「病院をできるかぎり支援したが、イスラエル軍は民間人や公共施設、学校、病院を攻撃の標的にしていた」と述べ、激しい攻撃を受けた病院は11月下旬から稼働できていないと明らかにしました。
その上で「パレスチナの人にとっても外国人にとっても、ガザ地区に安全な場所はない」と訴えました。
また、ガザ地区北部の攻撃の状況については「ことばでは言い表せない。学校や病院に避難していた人たちも拘束されている」と指摘しました。
フィクリさんは現在ガザ地区南部に移動して、食料などを配布する活動を続けていますが「数日前は200メートル先でイスラエルの無人機が爆弾を投下した」として、危険が差し迫っていると述べました。
また南部のラファに届けられた物資は北部には届いていないと指摘し「イスラエルは飢えでガザの人々を滅ぼそうとしている」と述べて一刻も早く支援が行き渡るようにすべきだと訴えました。