東京, 1月12日, /AJMEDIA/
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心に紹介。NNA編集スタッフが選んだ今号の本は、世界が直面しているエネルギー問題をユニークな切り口で論じた『エネルギーをめぐる旅 文明の歴史と私たちの未来』(古舘恒介著、英治出版)。
■人類とエネルギーの関わりを古今東西の視点で解説
中国を中心に、アジア各地でも脱炭素社会を目指す動きが加速している昨今。関連書籍が続々と出版されているが、独特の切り口でエネルギー問題や気候変動対策を論じたのが本書だ。
著者は、石油や天然ガスの開発を手掛ける企業に勤めるサラリーマン。長年、エネルギー業界で働きながら、「なぜ人類はエネルギーを大量消費するのか。そもそもエネルギーとは何なのか」と考察することをライフワークにしてきたという。
そんな著者が、エネルギーを切り口に物事を捉える試みを「旅」になぞらえ、科学的な解説のみならず、歴史、哲学、文学などを絡めて縦横無尽な思考でエネルギーの正体を追求。人類の飽くなきエネルギー希求が引き起こしたさまざまな問題の本質を暴きつつ、人にとって都合の悪い現実を直視し、心底納得することが経済活動と環境保護の両立をかなえるためには必要と訴える。
興味深かったのが、「エネルギー問題を考えることは、人類がいかに生きるべきかという哲学を考えることと同意」という持論。少ないエネルギー消費でも幸福を見いだしていた江戸時代の「粋」の精神など古今のエピソードが紹介され、俯瞰(ふかん)的にエネルギー問題を捉えることができる。
アゼルバイジャンの「燃える山」や富山県の黒部ダムなど、世界各地のエネルギーの“聖地”を巡る旅コラムも、著者のエネルギーおたくぶりが垣間見え楽しく読める。
原油価格の高騰が続き、日本政府が異例の対応として石油の国家備蓄の一部放出を決定するなど、エネルギー問題がますます深刻化している今。教示を受けられる一冊だ。