東京, 10月09日, /AJMEDIA/
【ロンドン時事】ノルウェー・ノーベル賞委員会はジャーナリスト2人へのノーベル平和賞授賞に際し「自由で独立し、事実に基づいたジャーナリズムは権力の乱用やうそ、戦争プロパガンダから身を守るのに役立つ」と自由で正確な報道の重要性を強調した。その上で、それが一段と厳しい状況に置かれているとして警鐘を鳴らした。
国際非営利団体「ジャーナリスト保護委員会(CPJ)」によると、紛争や殺人などで死亡した報道関係者は1992年以降これまでに、世界で少なくとも1531人に上った。死者数はここ数年減少傾向にあるが、紛争地以外で死亡するケースが増えているのが最近の特徴だ。
一方、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行した昨年来、政府の対応を批判するメディアと政治指導者の対立も目立った。強権姿勢で知られるブラジルのボルソナロ大統領は昨年9月の国連演説で「他の国々と同じく、国内メディアは民衆にパニックを拡散することで新型コロナを政治化してきた」と指摘し、メディアとの対決姿勢を鮮明にした。新型コロナ感染拡大当初の3カ月間に世界で拘束された記者は4倍に増えたとするデータがある。
「偽ニュース対策」と称した各国政府のメディアへの「検閲」も懸念される。トランプ前米大統領はリベラル派主要メディアの報道を「偽ニュース」と呼び、中傷を繰り返した。昨年の大統領選後には選挙結果の大規模不正を根拠なしに訴え続け、今年1月のトランプ氏支持者らによる連邦議会襲撃事件につながった。
ジャーナリズムへのノーベル平和賞授与には報道の役割を見詰め直すメッセージも込められていそうだ。