「成長と分配」にハードル 中間層復活目指す―新しい資本主義実現会議

東京, 10月16日, /AJMEDIA/

政府は15日、岸田文雄首相が掲げる「成長と分配の好循環」を検討する「新しい資本主義実現会議」(議長・首相)を設置した。自民・公明両党が衆院選で勝利した場合、賃上げした企業への税優遇など所得再分配を強化し、分厚い中間層の復活を目指す。ただ、分配の強化には、日本経済の規模を拡大する必要があり、低成長を打破する成長戦略の加速が求められる。

 「新内閣の目玉となる取り組みがいよいよ始まる」。15日午後、会議の運営を担う「新しい資本主義実現本部事務局」の看板掛けで首相は決意表明した。26日にも初会合を開く。

 首相が分配強化にかじを切るのは、競争原理を重視する新自由主義の下、成長の果実が中間層を含め社会全体に行き渡らず、格差拡大を招いたとの問題意識がある。

 アベノミクスでは、国・地方を合わせた法人実効税率を2014年度の34.62%から18年度の29.74%まで段階的に引き下げた。しかし、企業は利益を賃上げや設備投資に回さず、内部留保(金融業、保険業を除く)は20年度末で484兆円に積み上がった。物価変動の影響を差し引いた実質賃金は第2次安倍内閣発足直後の13年以降、16年と18年の2年を除いてマイナスとなった。

 新会議では、介護士・保育士らの待遇改善や非正規労働者の職業訓練の拡充などが議論される見通し。柱となるのは、賃上げを実施した企業に対する法人税の優遇措置の拡充だ。首相は14日の記者会見で「従業員一人一人の給与を引き上げた企業を税制で支援する」と改めて強調した。

 ただ、企業が賃上げに慎重姿勢を崩さないのは、将来の成長期待が低いためで、経済の実力を示す潜在成長率は1%を割ったままだ。首相は成長戦略として、科学技術立国の実現や地方のデジタル化などを掲げるが、「力不足感があり、成長が実現しないと日本経済は縮小均衡に陥る」(明治安田総合研究所の小玉祐一氏)と指摘されている。

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