「原因不明」子どもの急性肝炎 症状は 最新の分析結果は

東京, 4月5日, /AJMEDIA/

欧米を中心に報告が相次いできた、原因不明の幼い子どもの急性肝炎。国内でも子ども1人が死亡していたことがわかりました。

どのような症状が出るのか。最新の分析結果は。

これまでにわかってきたことをまとめました。(4月4日現在)

国内でも子ども1人が死亡
原因不明の子どもの急性肝炎は、欧米を中心に去年4月から報告が相次ぎました。
WHO=世界保健機関の去年7月の報告によりますと、症状が出たと報告されているのはイギリスやアメリカを中心に1010人に上り、5%にあたる46人が肝臓の移植を必要とし、2%にあたる22人が死亡しました。

そして、国内でも子ども1人が死亡していたことが、国立感染症研究所の発表でわかりました。

国立感染症研究所によりますと、ことし2月16日までに、原因不明の子どもの急性肝炎は156件報告され、肝臓の移植が必要となったケースは3件、ICU=集中治療室に入室するなど高度な治療が必要となったケースは18件でした。
どんな症状がでるのか
症状は、37度5分以上の発熱のほか、腹痛や下痢、おう吐といった消化器の症状が多くみられたということです。

ほかにも、皮膚などが黄色くなる「おうだん」、せき、便が白色になる、意識障害の症状もあったということです。

患者の年齢は1歳4か月から9歳2か月、中央値では4歳6か月でした。

男児が54%、女児が46%で性別による違いは見られません。基礎疾患があった人は25%でした。
急性肝炎とは
急性の肝炎とはどのような病気なのでしょうか。

肝臓は、体に必要なたんぱく質を作って栄養分をためたり、有害な物質を解毒したり、食べ物を消化するのに必要な胆汁を作ったり、と幅広い役割をになっています。

急性肝炎は子どもから大人までかかる病気で、肝臓の機能が低下し、
▽「おうだん」や、
▽おう吐、
▽全身のけん怠感、
▽発熱
などの症状を引き起こします。

国立国際医療研究センターのウェブサイトによりますと、肝炎のタイプによっては、1%から2%ほどの患者で急激に悪化し、死亡することもあるということです。
子ども「おなかのかぜ」から肝炎になることも
子どもの肝臓病に詳しい、勇村医院の田尻仁医師によりますと、子どもでも、いわゆる「おなかのかぜ」のときに肝機能が落ちて、肝炎になることがあるといいます。

ただ、特に乳幼児ではあまり症状が出ないことがあるということです。

肝炎の原因がはっきりしない場合、ビタミンを投与するといった対症療法で対応し、ほとんどは短期間で改善し、通常、悪化するケースは少ないということですが、「おうだん」が悪化すると脳に障害が出ることがあるほか、肝機能が極端に低下すると出血を止めるたんぱく質を作ることができなくなり、極めてまれに肝臓の移植が必要になることもあるといいます。
なぜ「原因不明」
一般的に、急性肝炎はA型からE型まで5種類ある肝炎ウイルスが原因で発症します。また、アルコール性肝炎や、薬物の摂取で起きる肝炎もあります。

しかし、WHOの専門家は、症状が出た子どもたちから、肝炎のウイルスや細菌や毒物、薬物など、通常、原因になると考えられるものは見つかっていないとしています。

このため、「原因不明の急性肝炎」としてWHOは各国の保健当局に注意をうながしました。

これを受けて厚生労働省は各地の自治体に対して、2021年10月までさかのぼって、検査で肝臓の酵素の値が高くなっていた16歳までの子どもがいないか調べて報告するよう求めています。

また、子どもの肝臓病に詳しい専門医などで作る「日本小児肝臓研究会」も調査チームを立ち上げて詳しい症状や原因を調べているということです。
原因に「アデノ随伴ウイルス」関連か
原因不明の肝炎が報告されて1年がたちますが、いまだにはっきりした原因はわかっていません。

これまで関与が指摘されてきたのが、のどの痛みや下痢などを起こす「アデノウイルス」です。
WHOによりますと、ヨーロッパの患者では、52%にあたる368人のうち193人でアデノウイルスが検出されたということです。

ただ、その後も原因をはっきりさせる決定的な証拠は見つからず、調査が続いていました。

国内でも、アデノウイルスが検出されたのは、情報が得られた151人のうち延べ16例にとどまっています。
新たな分析結果を発表
そうした中、注目される研究成果が出てきています。

3月30日、イギリスなど3つの研究グループが、別々に新たな分析結果をイギリスの科学雑誌「ネイチャー」に発表しました。

いずれの研究でも、患者の多くから「アデノウイルス」と関連のある「アデノ随伴ウイルス」が検出されたとしています。
▽イギリス・グラスゴー大学などのグループは、肝炎になった子ども32人のうち26人、▽アメリカ・カリフォルニア大学などのグループは14人のうち13人、▽イギリスのユニバーシティー・カレッジ・ロンドンなどのグループは28人のうち27人で、アデノ随伴ウイルスを検出したということです。

さらに、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンなどのグループは、このウイルスが体の中で増えるのを助けるとされる別のウイルスも検出したとしています。

いずれの研究グループも、健康な子どもや、肝炎とは関係のない病気の子どもも同時に調べていますが、これらの子どもからはアデノ随伴ウイルスはほとんど検出されなかったということです。
本来、アデノ随伴ウイルスは、重い病気を引き起こすことはないとされていますが、カリフォルニア大学などのグループは「複数のウイルスに同時に感染することが、原因不明の肝炎に影響している可能性がある」と指摘しています。

一方、新型コロナとの関係について、グラスゴー大学などのグループは、調査した地域で新型コロナに感染していた急性肝炎の子どもの割合は、地域全体での子どもの感染割合よりも低く、新型コロナと急性肝炎の間に直接的な関連はないとみられるとしています。

国内では、患者のうち新型コロナウイルスに感染したことがあるのは15%、新型コロナのワクチンを接種していたのは17%でした。(国立感染症研究所のまとめ)
日本の専門家「この情報だけで心配する必要はない」
日本小児肝臓研究会の運営委員長で、近畿大学奈良病院小児科の虫明聡太郎教授は、死亡例が報告されたことについて「従来から、急性肝炎で肝移植が必要になる子どもは年間10人から15人ほどいて、亡くなるケースもある。まだわかっていることは少ないが、今回のことだけで何か新しい病気が出現したとか、怖い事態になっているということではない。保護者の方も、この情報だけで心配する必要はない」と話しています。

そのうえで、アデノ随伴ウイルスの関係が指摘されていることについて「このウイルス自体は強い病原性を持っているわけではなく、これが直接の原因という単純な話ではないのではないかと思うが、さらに研究が待たれる状態だ。国内でもアデノ随伴ウイルスに注目した研究や分析を進めているところで、研究の成果を待ちたいと思う」と話しました。

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