進まぬ復旧、切り捨てに不安 「水と道路を」政治に思い託す―能登被災地【24衆院選】

東京, 10月19日, /AJMEDIA/

 日本海を望む能登半島北部の石川県珠洲市大谷地区は、元日の地震と9月の豪雨で今も断水が続く。復旧の遅さは否めず、住民から聞こえてくるのは「過疎地が切り捨てられるのではないか」との不安だ。衆院選の投開票(27日)を控え与野党幹部の被災地入りが相次ぐ中、政治への期待と諦めが入り交じる。

 ◇住みたい人がいる限り

 地名坊暢子さん(85)は5日、避難所を訪れた石破茂首相(自民党総裁)に「水と道路を直してほしい」と直接訴えた。県南部に避難した息子らと離れ、住み慣れた大谷地区の家で一人静かな時間を過ごすつもりでいたが、豪雨で水を断たれ、再び避難所に入らざるを得なくなった。

 避難所には各地から支援物資が届き、暢子さんは「立派な看護師さんもいて、優しくしてもらっている」と感謝する。

 一方、多くの住民が口にするのは復旧の遅れだ。暢子さんの息子行雄さん(67)は「こんな田舎にお金をかける必要はないと、切り捨てられている感じがする。都市部ではこうはならないはずだ」。首相の被災地訪問では、輪島市の避難所でも「見捨てないで」と訴える住民の姿があった。

 大谷地区では地震後約半年ぶりに復旧した水道が、豪雨により再び停止し、通水するのは早くて11月中旬という。珠洲市の担当者は「それでもぎりぎりのスケジュール。県外の業者にも頼んでいるが、公共工事の発注が多い時期のため断られることが多い」と話す。被災建物の公費解体も、県によると完了したのは9月末で約16%にとどまる。

 大谷地区の丸山忠次・区長会会長(69)によると、地震前に800人余りいた地区の人口は約3分の1になった。市街地へ続く道路は狭く急な坂が続き、大雪が降れば三たびの孤立集落化も懸念される。丸山さんは「こんな辺ぴな所に住むなというのが行政の本音かもしれない」と話す一方、「ここに住みたい人がいる限り、支えてほしい」と願う。

 ◇過疎地の縮図

 首相は大谷地区で記者団に「絶望の淵にいる方がもう一度頑張ろうという気持ちになれるよう、最大限の支援をしたい」と約束した。自民党は公約に防災庁設置を掲げ、立憲民主党の野田佳彦代表は復旧のための補正予算編成を主張する。

 「形にはこだわっていない」と語るのは大谷地区東部の馬緤町で区長を務める吉国国彦さん(59)。「住み続けるには何が必要かを考えてほしい。最低限の生活以上は望まないのに、それすらもかなえてもらえないのか」と訴える。

 復旧の遅れには、地理的条件の悪さや人手不足も影響していると考えられるが、吉国さんは、能登は日本中にある過疎地の縮図だと指摘する。実際に、災害支援で訪れた北海道や四国の自治体職員からも「うちにも同じような地域があり、災害に耐えられるか不安だ」という声を聞いた。「能登が試金石になる。ここを見捨てたら、他の地域も見捨てるつもりでしょうか」と問う。

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