東京, 9月12日 /AJMEDIA/
自民党総裁選に出馬する候補者の公約には、防衛費増額に伴う増税の停止など「負担増」に対する世論の反発を意識した政策が並んだ。衆院解散・総選挙をにらんで大型の補正予算編成が予想され、物価高の不満を和らげるバラマキ色の強い給付措置などを訴える動きも広がっている。
「増税ゼロ」を唱えたのは茂木敏充幹事長。1兆円規模の防衛増税に加え、少子化対策を強化する財源に充てる社会保険料の追加徴収も停止すると明言した。代わりに経済成長で税収が増えた分などで財源を確保すると主張。岸田政権の決定を覆す党ナンバー2の発言は波紋を呼んだ。
河野太郎デジタル相は、現役世代の社会保険料の負担軽減に取り組む考えを示した。加藤勝信元官房長官は給食費と子どもの医療費、出産費の負担をなくす「三つのゼロ」をアピールする。
秋の経済対策策定に向け、世代交代を目指す若手候補は物価高対策を掲げる。小泉進次郎元環境相は「低所得者や年金生活者を追加給付金で支援する」と表明。小林鷹之前経済安全保障担当相は「学校給食、介護施設、病院、保育所の支援」などに言及した。
林芳正官房長官は、電気・ガス代やガソリンの補助金について「家計支援で効き目が高い。必要な状況なら続けていく」との方針を示した。積極的な財政出動による経済成長を目指す高市早苗経済安保相は、「税率を上げずとも税収を増やす強い経済を支援する」と意気込む。上川陽子外相は「強力な物価対策を講じて実質賃金アップを目指す」と強調した。
石破茂元幹事長は格差是正を重視し、岸田政権で頓挫した金融所得課税の強化を「実行したい」と宣言した。ただ、ライバル候補に「中間層に対する増税となりかねない」などと批判を浴び、発言をトーンダウンさせた。
自民党の派閥裏金事件が強い政治不信を招いており、負担増を求めるハードルは高い。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、次期政権下で防衛増税の時期などが決まらない状況が続けば「政府に対する信認も損なわれかねない」と懸念する。