東京, 11月25日, /AJMEDIA/
ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」をめぐり、岸田総理大臣が凍結解除も含め検討を進める考えを示したことを受けて、自民党と国民民主党の政務調査会長が解除した場合の課題などについて意見を交わし、近く、公明党も交えた3党で具体的な協議に入ることを確認しました。
ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」について岸田総理大臣は22日、凍結解除も含め、検討を進める考えを示し、自民党の萩生田政務調査会長に対し、自民・公明両党と、解除を求める国民民主党との間で協議するよう指示しました。
萩生田氏は24日朝、国会内で国民民主党の大塚政務調査会長と会談し、凍結を解除した場合、灯油や重油が対象にならないことや、地方の税収が減るなどの課題があると説明しました。
これに対し、大塚氏は、去年、協議を行った際に課題は検討済みだとして、議論を深めるよう求めました。
そして、近く、公明党を交えた3党で具体的な内容の協議に入ることを確認しました。
このあと、大塚氏は記者団に対し、「トリガー条項の凍結解除に向けて前に進めたいという申し出なので、実現可能性は高まっている」と述べました。
西村経産相「3党協議に協力してよりよい仕組みに」
与党と国民民主党の間でガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除を含めた協議が行われることに関連して、西村経済産業大臣は24日の閣議のあとの会見で、「トリガー条項の凍結解除、今、進めている卸売りを通じて負担軽減をはかるやり方、それから消費者に直接給付で還元するやり方はそれぞれメリットとデメリットがある」と述べました。
そのうえで、「どのやり方をとっても一定の事務手続きの負担が生じる。3党で協議が行われるということで、そうした協議に協力して、よりよい仕組みになるよう考えていきたい」と述べ、与党と国民民主党による協議に協力していく考えを示しました。
鈴木財務相「脱炭素・財源など課題」凍結解除に慎重
一方、鈴木財務大臣は24日の閣議のあとの会見で、「トリガー条項の凍結解除には脱炭素に向けた国際的な潮流や、国と地方の合計で1兆5000億円の巨額の財源が必要となるなどさまざまな課題がある」として、凍結解除に慎重な姿勢を示しました。
そのうえで、鈴木大臣は「与党と国民民主党の間ではこうした課題も含めて議論されると考えており、財務省としては協議を踏まえつつ、適切に対応していく」と述べました。
森屋官房副長官「協議踏まえつつ関係省庁で適切に対応」
森屋官房副長官は記者会見で「来年4月まで継続する燃料油の激変緩和措置の出口戦略を考える上で、今回の検討が行われていると承知している。進め方や期間なども、今後3党間の検討の中で相談が行われると承知している。政府としてはその協議を踏まえつつ、関係省庁で適切に対応していきたい」と述べました。
公明 山口代表「真摯(しんし)に議論することが大事」
公明党の山口代表は、記者団に対し「来年4月までは今の激変緩和措置を継続することになっているが、その後のあり方について意見交換することはあってもいい。去年、意見を交わした実績を生かしながら、今後どういうことが可能か、真摯に議論することが大事だ」と述べました。
「トリガー条項」とは
ガソリン税は「揮発油税」と「地方揮発油税」を合わせた総称で、1リットル当たり合わせて53.8円が課されていて、このうち25.1円が本来の課税額に上乗せされています。
「トリガー条項」は、この上乗せ分について、全国平均のガソリンの小売価格が1リットル当たり160円を3か月連続で超えた場合、自動的に減税する仕組みです。
一方で、平均の小売価格が3か月連続で130円を下回った場合、上乗せ分の25.1円の課税が復活します。
また、トラックなどの燃料に使われる軽油についても地方税である「軽油引取税」が課されています。
課税額は1リットル当たり32.1円ですが、このうち17.1円が上乗せ分となっていて、ガソリン税と同様の「トリガー条項」が導入されています。
政府は、2011年の東日本大震災のあと、復興財源を確保するためこの「トリガー条項」を凍結し、現在もその状態が続いています。
ただ、原油価格の上昇や円安を背景にガソリン価格の高止まりが続く中、国民生活への負担を軽減するため、野党などからは「トリガー条項」の凍結解除を求める声が高まっています。
去年春にも自民・公明両党と国民民主党の間で検討チームが設けられましたが、政府・与党内には地方の税収減につながるなどと慎重論が根強く、結論が見送られました。
上乗せ分による税収は、ガソリン税が年間1兆円程度、軽油引取税が年間5000億円程度となることから、トリガー条項が発動された場合、税収の減少分をどう賄うのかが課題となります。