東京, 11月23日, /AJMEDIA/
防衛力の抜本的強化に向け、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」保有を求めた22日の有識者会議報告書を受け、政府・与党は反撃能力を行使する要件を巡る議論を本格化させる。日本が直接攻撃を受けた場合だけでなく、同盟国である米国が攻撃されたケースでも、限定的な集団的自衛権を適用して反撃能力を行使できるようにするかが大きな焦点となる。
反撃能力を行使する場合、前提として日本が武力攻撃を受けたとする「武力攻撃事態」の認定が不可欠だ。実際に被害が発生していなくても、弾道ミサイルなどで武力攻撃を受けたと政府が認定すれば、対処基本方針を閣議決定する。この方針に国会の承認を得られれば、首相が武力行使を伴う防衛出動を自衛隊に命じる条件が整う。
問題は、日本が直接攻撃を受けていない場合でも、反撃能力を行使するケースが想定されていることだ。政府は今年5月に閣議決定した答弁書で、集団的自衛権を行使する要件となる「存立危機事態」と認定すれば、反撃能力は行使できるとの立場を明らかにした。
つまり、米国のように日本と密接な関係にある他国に対する攻撃は、日本の存立が脅かされる存立危機事態と認めるケースがあり得る。この場合、政府は武力攻撃事態と同様、対処基本方針について国会で承認を得て、首相が防衛出動を命じる運びとなる。
専守防衛の観点から慎重論が根強い反撃能力を、米国への攻撃を理由に行使できるのか。政府関係者は「国会の関与など手続きを踏むことで、厳格な運用が可能だ」と述べ、一定の歯止めがかかると指摘。国際法違反の先制攻撃を禁止し、必要最小限度の武力行使を担保できると説明する。
ただ、武力攻撃事態法は、防衛出動の命令について「特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合」は事後承認も認めており、国会が歯止めとして機能するとは限らない。
公明党は「いたずらに疑心暗鬼を拡大させないようにすべきだ」(山口那津男代表)と厳格な歯止めを求めている。このため政府内には、反撃能力を行使する場合には事前の国会承認を義務付ける案も浮上している。
ただ、日本が直接武力攻撃を受けていない存立危機事態において、反撃能力を行使して敵のミサイル基地などをたたくのは「専守防衛の精神を超える」(内閣法制局幹部OB)との異論も根強い。こうしたことから、存立危機事態は対象外とすべきだとの意見もあり、政府・与党間で合意を得るのは容易ではなさそうだ。
◇集団的自衛権と反撃能力に関する政府答弁書
長妻昭氏(立憲民主)の質問主意書への答弁書(2022年5月)
誘導弾等の基地をたたくなどの他国の領域における武力行動で、「自衛権発動の3要件」に該当するものがあれば、憲法の理論上、許されないわけではない。このような考え方は、限定的な集団的自衛権の行使も含め、3要件の下で行われる自衛の措置としての「武力の行使」にもそのまま当てはまる。