核廃絶論議、分断が影 岸田首相「橋渡し」、険しさ増す―国際賢人会議

東京, 12月13日, /AJMEDIA/

 核兵器保有国と非保有国の有識者が核廃絶に向けて議論する「国際賢人会議」の初会合が11日までの2日間、被爆地広島市で開かれた。開催を提唱した岸田文雄首相は双方の「橋渡し」役を担い、来年同市で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)へ機運を醸成する狙いだった。ただ、会議では国際社会の分断が影を落とす場面もあり、核廃絶実現へ道のりの険しさが浮き彫りとなった。
 会議は白石隆熊本県立大理事長が座長を務め、米国やロシア、中国、インドなど核兵器保有国と、ドイツやアルゼンチンなど非保有国から10人余りが参加。開会式には、オバマ元米大統領らがメッセージを寄せた。
 分断は開会式でいきなり生じた。首相はウクライナ侵攻中のロシアが核使用を示唆したことについて「核の威嚇は受け入れられず、使用は決してあってはならない」と批判。ドイツのシュタインマイヤー大統領とオーストラリアのアルバニージー首相もロシアを名指しで非難した。
 これに対し、ロシア民間シンクタンクのフロプコフ氏は「政治問題にしないことだ。日独豪高官の核を威嚇に使っているとの発言は正しくない」と反論した。
 核軍縮を巡り重視される8月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、合意文書案にロシアだけが反対し決裂した。白石氏によると、国際賢人会議でも「随分フラストレーションがあった」という。
 首相は広島市が地盤で「核兵器のない世界」実現をライフワークとする。11日の閉会式では、広島サミットで核廃絶を議題とする考えを表明。内閣支持率が低迷する中、成果を挙げて政権浮揚につなげる思惑もあるとみられる。
 ただ、ロシアのプーチン大統領は9日の記者会見で「核兵器による予防攻撃」に言及。白石氏は閉幕後の記者会見で、核兵器の存在を前提とする核抑止論を乗り越えて、議論をどうリードするか問われ「答えが分かっているならこの会議は要らない」と述べた。第2回会合は来年春ごろに開催される。

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