東京, 11月30日, /AJMEDIA/
企業が自社株式を長期保有する株主への優待を強化する動きが広がっている。今年1月に始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)をきっかけに株式運用を始めた個人投資家を安定株主として取り込む狙いがある。特別商品の贈呈やイベントへの招待など、各社は知恵を絞っている。
優待制度を巡っては、配当金増額などで利益還元を求める声が強まっている。一方、資本効率への株主の視線が厳しくなり、株式持ち合いの解消が加速。企業は新たな安定株主を探す必要に迫られ、長期保有の傾向がある個人へアピールする。大和インベスター・リレーションズによると、優待実施企業のうち4割が長期保有を優遇する。
キリンホールディングスは12月末から、優待対象の要件に保有期間「1年」を設定。同社は「多くの株主に中長期にわたり保有してもらいたい」(広報)と説明する。3年以上は「プレミアム優待」とし、通常品に加え、グループの特別商品の贈呈などを検討する。
サンリオは来年9月以降、6000株以上を3年以上保有する株主に対し、オンライン上でキャラクターと交流できるイベントへの招待を計画する。オンワードホールディングスは、1000株以上の株主へ贈るギフトカタログで「1年以上の保有」を条件に追加した。
フジッコは来年3月末以降、半年以上持つ株主にグループの売れ筋商品などを贈呈する。優待制度に保有期間を導入したメーカーの担当者は「優待目的の短期売買を防ぎたかった」と強調する。
収益力向上や利益還元拡大ですぐさま結果を出すよう圧力を強める海外投資ファンドの存在も影響する。大和総研の瀬戸佑基研究員は「アクティビスト(物言う株主)よりも、個人に株式を持ってもらいたいという企業の思惑もあると考えられる」と指摘している。