月面着陸へ再挑戦 打ち上げ成功 都内ベンチャー企業

東京, 1月15日, /AJMEDIA/

民間による月面着陸を目指す東京のベンチャー企業が開発した月着陸船が、日本時間の15日午後、アメリカ フロリダ州の発射場から打ち上げられ、予定の軌道に投入されて打ち上げは成功しました。ことし5月末から6月初めごろ、月面着陸に挑戦する予定です。

東京のベンチャー企業「ispace」が開発した月着陸船は、アメリカのロケットに搭載され、日本時間の15日午後3時すぎ、フロリダ州にあるケネディ宇宙センターから打ち上げられました。

月着陸船はおよそ1時間半後にロケットから切り離され、予定の軌道に投入されて打ち上げは成功しました。

今後、月の重力を利用して加速しながら進路を変える「スイングバイ」を行うなどして月に接近し、ことし5月末から6月初めごろ、月面着陸に挑戦する予定です。

月面着陸をめぐっては2024年、アメリカの宇宙開発企業が民間としては初めて無人の月着陸船での着陸に成功したほか、今回の打ち上げでも「ispace」とともに別のアメリカ企業の月着陸船も搭載され、2025年3月に月面着陸に挑戦します。

「ispace」は2023年に月面着陸に挑戦して失敗していますが、今回の再挑戦に成功すれば、アメリカ企業に次いで日本の民間企業として初の月面着陸となる見通しです。

「ispace」の袴田武史CEOは「1回目の経験があるため自信を持って取り組めている。着陸に向けて、着実に進めていきたい」と話していました。

東京のパブリックビューイング 約300人が見守る
東京 千代田区に設けられたパブリックビューイングの会場には、月着陸船を開発した「ispace」の従業員やその家族、それに関係する企業などからおよそ300人が集まり、打ち上げの配信映像を見守りました。

集まった人たちは、カウントダウンをしながら打ち上げ時刻を迎え、およそ1時間半後に着陸船がロケットから分離されると、大きな歓声をあげながら拍手をしていました。

月着陸船に搭載された実験装置を開発した企業「高砂熱学工業」の山本一郎研究開発本部長は「打ち上げや分離の瞬間は、わが子を送り出すような気持ちでした。月に無事着陸し、しっかりと働いてほしい」と話していました。

月着陸船と6つの搭載品
【月着陸船とは】
「ispace」の月着陸船は、高さおよそ2.3メートル、幅およそ2.6メートルで、重さは燃料を入れない状態で340キロほどあります。機体は「八角柱」に近い形をしていて、機体の底にはガス噴射装置が取り付けられ、宇宙空間での姿勢制御や、月面着陸時の減速などに使用されます。また、着陸時には機体から脚のようにのびる4本の支柱を月面について衝撃を緩和します。

【搭載品1. 探査車】
着陸船は月面に物を運ぶ役割も担っていて、機体には6つの搭載品が積み込まれています。その一つが「ispace」が開発した月面を走行する探査車です。車体は全長50センチ余り、高さと幅がおよそ30センチで、重さは5キロほどに軽量化しています。月面では最大14日間の走行が想定され、車体に搭載されたカメラで月面の撮影を行うほか、スコップで月の砂を採取する計画です。

【搭載品2. 月面用水電解装置】
また、人類が月面で活動することを見据えた実験装置も搭載されています。ビルの空調整備事業などを展開している「高砂熱学工業」が開発した「月面用水電解装置」で、たて30センチ、横45センチ、高さ20センチほどの大きさがあります。水を電気分解して水素と酸素を発生させる装置で、今回は地上から運んだ水を使って月面でも装置が作動するか実証実験が行われます。将来的には、月に存在するとされる水を電気分解して水素と酸素を発生させることを目指していて、実現すればロケットの燃料や空気として利用でき、月での長期滞在が可能になると期待されています。

【搭載品3~6. アニメのプレートも】
着陸船にはこのほか、台湾の大学が開発した放射線による電子機器への影響を観測する装置、東京のベンチャー企業の藻類を培養する装置、アニメに登場する石碑を模した特殊合金プレート、それにスウェーデンのアーティストの作品などが搭載されています。

月を舞台にした開発競争 参入国や企業相次ぐ
月を舞台にした開発競争は近年、参入する国や企業が相次ぎ、激しさが増しています。

このうちアメリカは、日本も参加する国際月探査プロジェクト「アルテミス計画」で、アポロ計画以来となる、宇宙飛行士による月面探査を目指しています。

このプロジェクトで、NASA=アメリカ航空宇宙局は2022年、新たに開発した宇宙船を無人の状態で月を周回して地球に帰還させる試験飛行を行いました。

一方で、宇宙飛行士が月面着陸を行うミッションの実施は、目標としていた2026年9月から、2027年の半ばに遅らせることを先月発表しました。

中国は2024年、無人の月面探査機で月の裏側から岩石などのサンプルを地球に持ち帰ることに世界で初めて成功しています。

中国は月の探査計画を宇宙開発の重要な柱の1つと位置づけていて、2030年までに中国人宇宙飛行士による有人での月面着陸を目指すほか、2035年までに月面に科学実験や資源開発を行う研究ステーションを整備するとしています。

無人探査機で月着陸に成功する国も相次いでいます。

インドは2023年に「チャンドラヤーン3号」が、日本も2024年に「SLIM」がそれぞれ、月面着陸に成功しました。

無人探査機で月着陸に成功した国としては、旧ソビエト、アメリカ、中国に次いで、それぞれ世界で4か国目と5か国目になりました。

さらに近年は、国だけでなく民間企業による月面着陸への挑戦も相次いでいます。

このうち2024年、アメリカの宇宙開発企業「インテュイティブ・マシンズ」が民間としては初めて、無人の月着陸船での着陸に成功しました。

2025年も今回、日本の「ispace」とともに打ち上げられた、宇宙開発企業「ファイアフライ」など複数のアメリカ企業が月を目指して、無人の月着陸船の打ち上げを予定しています。

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