東京, 7月01日, /AJMEDIA/
【北京時事】中国で1日、スパイ行為を取り締まる「反スパイ法」の適用範囲を大幅に拡大する改正法が施行された。ただ、どのようなことが「スパイ行為」に当たるのか不明確で、日系企業は社員拘束といった予期しないリスクに身構える。中国政府は外資に投資拡大を呼び掛けているが、もたつく景気回復の足かせになる恐れがある。
反スパイ法、ネット検索も注意 在中韓国大使館が安全呼び掛け
中国では3月にアステラス製薬の日本人幹部が同法違反の疑いなどで拘束された。だが、具体的な容疑は明らかにされていない。北京駐在の日系メーカー幹部は「日本の民間人拘束はショックだった」と動揺を隠さない。「社員の安全確保はどの企業でも最優先課題。何が駄目なのか、当局は明確にしてほしい」と困惑する。
ある日系電機大手は5月、全社員宛てに中国滞在中の注意事項に関する通知を出した。反スパイ法は「運用面に関して不明瞭なところが多くある」として、市内での写真撮影などを控えるよう求めているという。
李強首相は6月の国際会議で「中国は高いレベルの対外開放を続ける」と演説し、対中投資の拡大を呼び掛けた。ただ、日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、中国事業の拡大に意欲を示す企業の割合は2022年度に33.4%まで低下。比較可能な07年度以降で最低となった。
中国当局は政治的に対立する国の企業や国民に反スパイ法を適用するケースが多いとされる。米コンサルティング会社は「中国の地政学リスクは高まりつつある」と警鐘を鳴らす。
しかし、共産党政権にとって、治安維持は経済発展よりも優先する最重要課題。日系エネルギー大手の関係者は改正法について「まずは運用状況を注視する」とした上で、再び邦人拘束などの問題が起きた場合は、企業の長期的な対中投資戦略に悪影響が出るのは必至だと懸念を示した。