愛用の「Apple Watch」から「Galaxy Ring」に替えて分かった長所と短所

東京, 2月4日, /AJMEDIA/

筆者は10年ほど前から、スマートウォッチをいつも着用している。そのため、399ドル(日本では税込5万9800円)の「Apple Watch Series 9」の代わりにサムスンの400ドル(同6万3690円)の新しい「Galaxy Ring」を着用することにためらいを感じたのは、理解してもらえるだろう。Galaxy Ringは、ユーザーのアクティビティーや睡眠、その他の健康指標を測定する指輪型のウェルネストラッカーだ。

 筆者は「Oura Ring」もいつも着用しているので、スマートリングには慣れている。ただし、通常はOura RingとApple Watchの両方を着用している。健康やフィットネス、睡眠の追跡を、丸ごとスマートリングだけに頼ったことは一度もない。今回、それを実行したことで、スマートリングをお薦めできる人(そして、お薦めしない人)と、スマートウォッチよりも優れている点と劣っている点について、多くを学ぶことができた。Galaxy Ringのようなスマートリングはユーザーが気を取られる要素が少なく、快適に着用することが可能で、バッテリーも長時間持続する。一方、Apple Watchのようなスマートウォッチははるかに包括的なワークアウトの相棒となっている。

 Apple WatchとGalaxy Ringは、それぞれ異なるユーザー層を対象としている。前者は「iPhone」ユーザーを、後者は「Android」ユーザー、特にサムスンの「Galaxy」スマートフォンのユーザーをターゲットとしている。とはいえ、筆者が今回のレビューで気づいた点の多くは、ほぼすべてのスマートウォッチとスマートリングに当てはまるはずだ。

Galaxy Ringの方が優れていると感じた点
  Galaxy Ring(さらに言うとOura Ringも)には、Apple Watch(とその他のスマートウォッチ)と比べて、優れている点が主に3つある。バッテリー持続時間が長いこと、ユーザーが気を取られる要素が少ないこと、そして、着け心地が良いことだ。

 使い方にもよるが、Apple Watchのバッテリーは1~2日程度持続する。米CNETのレビューを見ると、これは、Googleの「Pixel Watch 3」やサムスンの「Galaxy Watch7」など、ほかのフラッグシップスマートウォッチでも変わらない(Garminの「Venu 3」や「OnePlus Watch 2」など、数日持つものもある)。それに対して、Galaxy Ringは1回の充電で約6日間持続した。これだけ長時間持続してくれると、バッテリー切れの心配をせずに着けっぱなしにしておくことができる。

 またGalaxy Ringには、透明な光る充電ケースも付属しているので、ワイヤレスイヤホンのように外出中でもリングを充電することができる。このアイデアは賢い。ヘルストラッカーの充電について全く考えなくてもよい未来への一歩のようだ。自社で販売しているウェアラブルデバイスに対してこのようなアイデアを採用している企業があまりないことに驚いている。コンセントに差し込む必要のない持ち運び可能なApple Watch用充電器が登場したら、おそらくゲームチェンジャーになるだろう。

 Galaxy Ringには画面がなく、通知を送信する機能も備えていないため、ユーザーが気を取られる要素がスマートウォッチよりもはるかに少ない。筆者はApple Watchを着用しているとき、エレベーターや地下鉄を待っていて、スマートフォンを取り出したくないときなど、ちょっとした空き時間に、通知やニュースの見出しをスワイプしながら確認することがよくある。Apple Watchを手放したおかげで、その習慣から抜け出すことができた。

 Galaxy Ringは、Apple Watchよりもはるかに快適で包括的な睡眠トラッカーでもある。重量は2.3~3.3g(本体のサイズによって異なる)で、Apple Watch Series 9(最も軽いものでも31.9g)よりはるかに軽い。Apple Watch Series 10はSeries 9よりも数g軽いが、それでも超軽量のGalaxy Ringとは比較にならない。筆者はスマートウォッチを着用したまま寝たことがあるが(スマートリングではない普通の指輪を着けたままうっかり寝てしまったこともある)、Galaxy Ringは軽量で、寝ている間その存在を意識することはほとんどない。

 Galaxy Ringは、装着感が良いだけでなく、睡眠パターンとそれがエナジーレベルに及ぼす影響について、Apple Watchよりも多くの情報を提供してくれる。サムスンは、「Samsung Health」アプリで「睡眠スコア」を提供しており、睡眠時間や安眠度、体力回復、精神回復、睡眠サイクルなどの要素に基づいて、睡眠の質を評価してくれる。

 新しい指標である「エナジースコア」は、前日の活動と睡眠関連のさまざまな指標を分析し、今日どれだけ活動しても大丈夫なのかヒントをくれる機能だ。この機能は完璧ではない。エナジースコアの評価が自分の実際の感覚と一致しないことも時々ある。また、運動をしたにもかかわらず、あるいは少なくとも散歩に行った日が今週は4日あったにもかかわらず、平均活動時間が0分と表示されたこともある。とはいえ、こうした数値は時間の経過とともに改善されていくと思う。サムスンが少なくとも筆者の健康指標をより深く理解しようとしてくれていることをうれしく思う。

 サムスンは、それ以外の方法でも、睡眠習慣を分析したり、細かく分類したりしようとしている。例えば、Samsung Healthアプリでは、睡眠時間の増加などの変化が睡眠スコアの改善にどうつながっているか、ちょっとしたアドバイスが表示されることがある。睡眠習慣に基づいて、動物のマスコットをユーザーに割り当てる睡眠コーチングツールもある。筆者の場合は、ハリネズミだ。総睡眠時間は十分だが、ベッドで起きている時間が長すぎて、眠りにつく時間が一定ではないという意味らしい。

 Apple Watchには、睡眠スコアやエナジースコアに相当するものはないが、Galaxy Ringを含むほとんどのウェアラブルデバイスと同様、睡眠の段階を測定する機能は備えている。しかし、「watchOS 11」のリリースによって、睡眠時におけるApple Watchの利便性が向上した。新しい「バイタル」機能は、夜間に健康指標を測定し、測定値が標準範囲から外れている場合は、ユーザーに通知してくれる。睡眠と直接関係があるわけではないかもしれないが、夜間にユーザーの手首に装着されている時間を利用して、有用な洞察を収集している。Apple Watch Series 9とApple Watch Series10、「Apple Watch Ultra 2」は、Galaxy Ringのようなスマートリングと違って、睡眠時無呼吸症候群の兆候を検出することもできる。

 なお、Ouraもこうした機能の多くを提供している、ということにも注意したい。「睡眠スコア」と最近のアクティビティーに基づく洞察とともに、ユーザーがどれだけ休息を取れているのかを教えてくれる「コンディションスコア」も、そうした機能のひとつだ。

 Apple Watchはワークアウトの相棒として、Galaxy Ringよりもはるかに優れている。ワークアウトの支援は、スマートウォッチで一般的な機能だ。Galaxy Ringをエクササイズの監視に使用することに関して、筆者が最も不満に思っているのは、ランニングマシンや室内サイクリングでエクササイズをしているときの心拍数の測定値が必ずしも正確ではないように感じられたことだ。

 筆者は、Galaxy Ringをチェストストラップ式の心拍数モニターと比較してみた。このタイプの心拍数モニターは、指や手首に装着するウェアラブルデバイスよりもはるかに精度が高いと考えられているからだ。チェストストラップとスマートウォッチの測定値には常に差がある。とはいえ、通常、その差は小さいので、スマートウォッチでエクササイズを記録したときの精度については問題ないと思える。

 しかし、Galaxy Ringはチェストストラップ式心拍数モニターと比べて、1分あたり20~30回(またはそれ以上)ずれることがあり、心拍数ゾーンは完全にバラバラだった。これは、筆者のメインの有酸素運動である屋内サイクリングをしているときに特に顕著だった。以下の結果を見て、Galaxy Ringと「Polar」チェストストラップで記録された平均心拍数と最大心拍数の違いを確認してほしい。

平均心拍数
サムスン Polar
ランニングマシン 144 bpm 149 bpm
屋内サイクリング 119 bpm 142 bpm
屋内サイクリング 120 bpm 137 bpm
屋内サイクリング 107 bpm 145 bpm
最大心拍数
サムスン Polar
ランニングマシン 179 bpm 174 bpm
屋内サイクリング 153 bpm 142 bpm
屋内サイクリング 164 bpm 166 bpm
屋内サイクリング 139 bpm 172 bpm

 Galaxy Ringの血中酸素レベル測定も正確ではないようだった。Galaxy Ringによると、筆者の血中酸素レベルは夜間に定期的に80%台まで下がっており、77%まで低下したこともあったそうだ。参考までに、通常、健康な人の血中酸素レベルは95~100%だ。以前、Apple Watch Series 9で測定した筆者の血中酸素レベルは、97~100%だった。

 筆者は現在、心拍数と血中酸素レベルの測定結果について、サムスンに問い合わせているところだ。ちなみに、これらの測定値は、医療診断を目的としたものではない。

 Apple WatchなどのスマートウォッチがGalaxy Ringよりも優れている点はほかにもあるが、それらに関しては、Galaxy Ringが劣っているというわけではない。単に、スマートウォッチとスマートリングはそれぞれ目的が異なるというだけのことだ。

 例えば、Galaxy Ringには、一目で確認できる画面がないため、当然、ワークアウトの指標をリアルタイムで監視するのは、スマートウォッチよりもはるかに難しい。次善策として、筆者はサイクリングやランニングマシンでのワークアウト中に、「Galaxy Z Fold6」でSamsung Healthアプリを開きっぱなしにしていた。ただし、画面がタイムアウトしたら、諦めるしかなかった。常時オンのディスプレイで健康データを確認することはできないからだ。Appleの場合、サイクリングのワークアウト中にiPhoneのロック画面に指標を表示してくれる「ライブアクティビティ」という機能がある。サムスンも同様の機能を開発してくれるといいのだが。

 Galaxy Ringはウェルネスと睡眠を追跡する機能を備えてはいるものの、画面がないため、「スマート」な機能性という点でも、スマートウォッチに大きく劣る。だが、Galaxy Ringはいくつかのおもしろい方法でサムスンのスマートフォンと連係する。例えば、指をダブルタップして、カメラを操作したり、アラームを解除したりすることが可能だ。サムスンは、こうした連係機能をさらに追求するといいかもしれない。

 サムスンには、将来的にこのジェスチャーを充実させて、スマートウォッチに比べて不足している部分を補ってほしい。例えばタイマーや着信を終了したり、メディアの再生を操作したりできると、優れたユースケースとなりそうだ。さらにこのジェスチャーをカスタマイズして、それらの操作の1つか2つを実行できれば素晴らしい。目に見えないボタンのようなものだ。

 一方、また使いたいと特に感じた機能の1つは、Apple Watchのアラーム機能だ。Galaxy Ringはバッテリー持続時間が長いため、音を出さないバイブレーションのアラームに最適だろう。多少厚みが増すことになっても、サムスンにはこの機能を将来のバージョンのGalaxy Ringに追加することを検討してほしい。

 筆者は長年スマートウォッチを愛用してきた者として、Galaxy Ring(そして公平に見てOura Ringも)が手首に着けるデバイスよりも優れている点を評価できる。より長いバッテリー持続時間、睡眠と健康指標への包括的なアプローチ、快適な装着感は、すべてプラス要素だ。しかし最終的には、同程度の価格か、より安価な場合もあるスマートウォッチの方が、さらに多くの機能を提供できるだろう。

 Galaxy Ringなどのスマートリングは、主に睡眠とアクティビティーのトラッカーを求め、必ずしも本格的なトレーニングや、ワークアウト中のさまざまなリアルタイムの健康指標を必要としない人に向いている。また、単純に腕時計を身につけるのが好きではない人や、スマートフォンに縛られていると感じたくない人にも良い選択肢となるだろう。

 スマートリングがスマートウォッチに取って代わることはなさそうだ。しかし、数週間使ってみて、両者にはお互いから学ぶべきことが多くあることが分かった。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts