思惑抱えた神経戦 ウクライナ・台湾で応酬―米中首脳、2時間の会談

東京, 3月20日, /AJMEDIA/

バイデン米大統領と中国の習近平国家主席の約2時間に及ぶ電話会談では、ロシアのウクライナ侵攻や台湾問題で神経戦が繰り広げられたもようだ。対ロ支援への代償を示唆するバイデン氏に対し、習氏は米台接近をけん制。中ロ連携への米国の懸念と、対米関係を安定させたい中国の思惑が交錯した。
 ◇米、追い立てず
 「対話は率直だった。詳細にわたり、中身あるものだった」。米政府高官は記者団に、会談の雰囲気を説明した。
 米側によると、会談はウクライナ侵攻に大半の時間を費やした。バイデン氏は対ロ支援の「意味と結果」を説明し、習氏に警告。「制裁」という言葉を使ったかは不明だが、各国が結束して対応する可能性も示唆した。
 国連総会で対ロ非難決議を棄権し、ロシアに同調する中国の姿勢に各国の不信感は強い。中国がロシアへの軍装備品提供などに踏み切れば戦況に影響する恐れもあり、米国の警告には各国の懸念に配慮する目的もあったとみられる。
 ただ、バイデン氏は具体的要求を迫らず、習氏の顔を立てた形だ。中国をロシア側に追い立てないよう配慮した可能性がある。サキ米大統領報道官は「歴史にどう評価されるのかを決めるのは習主席と中国だ」と述べた。
 ◇中国、歩み寄り期待
 中国外務省の発表によれば、バイデン氏は「中国側と意思疎通して(ウクライナの)事態のエスカレートを防ぎたい」と協力を訴えたとされ、対中けん制の文言は見当たらない。中国側はロシアからの支援要請自体を「虚偽情報」と一蹴しているためだ。代わりに重点的に紹介された習氏の発言は「中米関係の正しい軌道に沿った発展」など、歩み寄りの呼び掛けだった。
 中国側は、ウクライナ問題での協調姿勢をちらつかせ「本命」の米中関係の安定化につなげたい。バイデン氏は会談で、同盟関係強化による対中包囲網を形成せず「台湾独立を支持しない」と述べたとされ、習氏は「あなたの表明を非常に重くみている」とくぎを刺した。
 昨年11月の会談でもバイデン氏は同様に発言したが、米側はその後、同盟国や台湾との関係をむしろ強化。中国は「言行不一致だ」(王毅国務委員兼外相)と反発した。
 習氏の3期目入りが確実視される今秋の共産党大会に向け、指導部は対米や経済を含めた「安定」を最重視する。厳格な新型コロナウイルス対策に伴う消費低迷や、住宅市場の冷え込みが重しになっている中国にとって、ウクライナ情勢の泥沼化による世界経済の混乱は望まないシナリオだ。
 ◇一定の距離
 習氏は、一日も早い停戦が「当面の急務」で、「中国は建設的役割を果たし続ける」と語った。しかし、具体策を示さず、ロシアを刺激するのを避けるあいまいな態度は崩さなかった。
 米シンクタンク外交問題評議会のカプチャン上級研究員は「中国は自国の経済や安全保障上の利益と無関係の問題とは距離を置く傾向がある」と指摘。中国はロシアと一定の関係を保ちつつ、ウクライナ情勢への「深い関与」は避けると予想している。

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