岸田首相、解散命令請求の要件拡大 世論・野党追及で方針転換

東京, 10月20日, /AJMEDIA/

 岸田文雄首相は19日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令について、従来の法解釈を変更し、刑法違反だけでなく民法違反も、裁判所への請求要件になり得ると表明した。教団への厳しい世論を背景に、野党が追及を強める中、方針転換を迫られた形だ。ただ、信教の自由との関係で拙速との印象は否めない。
 「政府として改めて考え方を整理した。民法の不法行為も(要件に)入り得る」。首相は19日の参院予算委員会で、立憲民主党の小西洋之氏から「民法違反は該当しないと明言したのは旧統一教会との癒着の成れの果てだ」と追及され、あっさりと解釈変更を認めた。
 解散命令の要件を巡り、判例は「刑法等」違反を挙げている。政府は、この刑法等を「罰則により担保された実定法規が典型例」と解釈。首相もこれを踏襲し、18日の衆院予算委では「民法の不法行為は入らない」と説明した。
 しかし、関係者によると、旧統一教会には民事責任を認めた判決はあるが、刑事責任を認めた確定判決はない。首相は、政府に寄せられた相談案件が刑事事件に発展し得ると説明したが、立民の長妻昭政調会長は「一から(裁判を)始めると何年もかかる」と批判した。
 解散命令に対する首相の「本気度」が問われれば、先に打ち出した史上初の調査指示の決断にも疑問符が付きかねない。関係者によると、解釈変更はこうした懸念から首相官邸が主導し、関係省庁の反対を押し切る形で進んだ。
 もっとも、政府はこれまで解散命令の請求について「信教の自由を踏まえれば十分慎重に判断すべきだ」(14日閣議決定の答弁書)と慎重な立場を取り続けてきた。にもかかわらず、首相が「朝令暮改」(立民の安住淳国対委員長)で方針転換したことを、立民幹部は「法治国家とは思えない」と突き放す。
 首相が、世論や野党に押される形で生煮えのまま打ち出した方針は、これにとどまらない。18日の衆院予算委では、霊感商法や高額献金の被害救済法案について「今国会(の提出)を念頭に準備を進める」と表明したが、会期末の12月10日まで既に審議日程は目白押しで、今後の展望を描けているわけではない。
 首相周辺は「本来なら法案準備に3カ月ほどかかるが突貫工事になる。関係省庁から『できない』と言われてもやってもらう」と強調。一方、自民党内からは「国会会期を延長せざるを得なくなる。会期末は大混乱になる可能性がある」(関係者)と危惧する声も漏れる。

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