東京, 10月25日, /AJMEDIA/
2012年に長崎県対馬市の寺から盗まれ、その後、韓国の寺が所有権を主張していた仏像をめぐり、韓国の最高裁判所が対馬市の寺の所有権を認めた判決から26日で1年となりますが、いまだに仏像は返還されていません。韓国政府は「返還の可否や手続きは関係機関で決定する」と述べるにとどまっていて、仏像の返還の見通しは不透明なままです。
長崎県の有形文化財「観世音菩薩坐像」は、2012年に対馬市の観音寺から盗まれました。
仏像はその後、韓国で見つかりましたが、韓国中部にあるプソク(浮石)寺が所有権を主張して裁判を起こし、韓国の最高裁判所は1年前、仏像の所有権は対馬市の寺にあると認める判決を言い渡しました。
仏像は韓国政府の施設に保管されていて、日本政府は韓国政府に対して繰り返し返還の働きかけをしているということです。
しかし韓国外務省はNHKの取材に対し「返還の可否や手続きなど具体的な事項に関しては、法令により関係機関で決定する」と述べるにとどまっています。
韓国法務省も「刑事訴訟法に基づき没収品の扱いは管轄の検察庁が決める」と回答していて、最高裁判決から26日で1年となりますが、仏像の返還の見通しは不透明なままです。
一方、仏像の所有権を主張して裁判を起こした韓国のプソク寺は「仏像を寺へ運び100日間の『法要』を行いたい」と主張し日程を調整しているとしています。
元住職「すぐにでも仏像をお迎えに行きたい」
12年前に仏像が盗まれた対馬市の観音寺の元住職、田中節孝さんは韓国の最高裁判所が仏像の寺の所有権を認める判決を出してから26日で1年になるのを前にNHKの取材に応じました。
田中さんは判決が出た日を振り返りながら「これで安心して眠れると思いましたが、時間がたっても具体的な話がどこからも出てきません。だんだん心細くなり、とうとうきょうになってしまい、振り出しに戻ったような気持ちです」と今の心境を明かしました。
その上で「韓国は東京の人たちが思うよりも対馬にとっては近くの国です。あす取りに来るよう言われれば、すぐにでも仏像をお迎えに行きたいですし、その気持ちはずっと持ち続けていたいと思います。日韓両政府には一刻も早く返してもらえるように力を尽くしてほしいです」と訴えていました。
対馬市長「即時返還を強く求める」
対馬市の比田勝尚喜市長は「判決から1年が経過するなか、いまだ返還されず具体的な進展も見えない現状を踏まえると、観音寺関係者の皆様は進展が見られず、不安な日々を過ごしております。この12年の間、ご本尊に手を合わせることなくお亡くなりになった檀家様もいらっしゃいます。一刻の猶予もない状況に危機感を抱いており、即時返還を強く求めます」とコメントを発表しました。