東京, 10月18日, /AJMEDIA/
アメリカ映画界の最高の栄誉とされるアカデミー賞を主催する団体が選ぶ「学生アカデミー賞」のアニメーション部門で銀賞を受賞した金森慧さん(22)が18日、都内で会見し「銀賞は悔しさしかない。今後は日本の『和』とCGを組み合わせるような表現をしていきたい」と述べました。
東京出身の映像作家、金森慧さんは10月14日、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーが選考する「学生アカデミー賞」のアニメーション部門で、銀賞を受賞しました。
「学生アカデミー賞」は過去の受賞者に映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス監督らも名を連ねるなど、“学生版のオスカー”として知られています。
受賞作品の「Origami」は金森さんがデジタルハリウッド大学の卒業制作として作った短編のCGアニメーション作品です。
18日、金森さんは大学で会見を開き「これまで自分が頑張って積み重ねてきたものが形になったようで感謝の気持ちでいっぱいです。ただ、ここまできて銀賞というのは悔しさしかなくて、受賞は自信にはなりましたが『調子に乗るなよ』と言われているような感覚になりました」と振り返りました。
テーマの折り紙は金森さんが小学1年生のころからの趣味だということで「今までのアニメ作品では折り紙がリアルに表現されていないのがほとんどで違和感がありました。紙の質感や厚みを考慮しつつ折っている過程をちゃんと見せることにこだわったので技術的な検証が大変でした」と制作の苦労を語りました。
そのうえで「自分の受賞で日本の学生たちの間で世界に発信しようという流れができたらいいと思うし、金賞をねらってほしいです。今後はこれまでに表現できなかったことを映像にしたいですし、日本の『和』とCGを組み合わせるような表現をしていきたいです」と抱負を述べました。
受賞作品は来年、アメリカで発表されるアカデミー賞の選考の対象となるということです。
高校2年生から独学でCG制作
学生アカデミー賞のアニメーション部門で銀賞を受賞した金森慧さんは、東京 東久留米市出身の22歳。
ことし3月に東京のデジタルハリウッド大学を卒業し、現在は海外で活動するための準備を進めながら、映像作家として活動しています。
幼い頃、人気映画の「ハリーポッター」や「スター・ウォーズ」シリーズを見て、映画のCGに興味を抱き、高校2年生のときから独学で制作を始めました。
大学在学中、書道をテーマにした作品「舞(まい)」が世界的なCGコンテストで入賞するなど、作品は国内外のコンテストに出品されているほか、自身のSNSにも投稿されてネット上で拡散し、話題を呼んでいます。
受賞作品の「Origami」は全部で3分ほどの短編CGアニメーション作品で、大学の卒業制作として作られました。
金森さんが小学1年生のころから趣味としている「折り紙」がテーマで、大地から生命がいぶくように、正方形の紙がさまざまな生き物に折られていく様子が描かれています。
紙が折られていく過程に加えて、折られたあとの紙の厚みや質感、それに光の透け具合などを精巧かつリアルに再現したということです。
創作の原点は折り紙
金森さんは自身の創作の原点について、小学1年生のころから趣味としている折り紙があるとしています。
金森さんは折り紙について「紙という単純でシンプルな素材が折るだけで人を驚かせるものになることが一番の魅力だと思うので、今回の作品でもそれを表現したかった。物心がついて、記憶がある中では最初に好きになったのが折り紙なので、僕の創作活動の原点です」と話していました。
また、折り紙とCGの共通点について「折り紙もCGも数学的に立体を捉える感覚が似ているなと思い、ハマっていきました。昔から完璧主義者で、折り紙では正確に折りたいと思っても手だと完璧にはできないのですが、CGだと数値で入力するためピタッと合わさる気持ちよさにひかれました」と解説しました。
一方で、CGならではの難しさと力を入れた点ついて「完璧な形になりすぎて、1ミリのずれもない状態だとリアルに見えないので、実際に手で折ったかのように微妙なずれがないといけません。今回の作品でも、完璧に折り上がったあとにリアルに見せるため、わざとずらすという工程を踏んでいます」と話していました。
そのうえで「Origami」について「紙の変形の表現には自信があり、最初から最後まで見せたかったので、カットを割らない『長回し』を多用しています。また折り紙をテーマにした作品を作る機会があれば、より本物らしく寄せていくためにもさらに細かくディテールを詰めていきたい」と話していました。